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ラグビーPRESSBACK NUMBER
元日本代表のラグビーアカデミーが「障がい者歓迎」を掲げたワケ…「出来ると思っていなかった」発達障害を抱える“193センチ、127キロ”選手の言葉
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byElite Rugby Academy
posted2024/04/25 11:03
茨城県Elite Rugby Academyの君島良夫代表(左)。アカデミー生である正田信也さん(右)は自閉スペクトラム症とADHDの診断を受けているという
仲間からパスを受けた信也さんが走りはじめた。隅にトライを決めた。「信也ナイス!」「信ちゃんナイス!」周囲から声が飛んだ。
「自分でも出来ると思ってなかったです」
信也さんは本稿のためのインタビューでそう話し、となりで聞いていた母に笑いかけた。
当初は「障がい者歓迎」とは明記せず
平日のプレー環境がない子ども達を対象に2021年に発足したアカデミーは、当初から「障がい者歓迎」を謳っていたわけではなかった。転機は2023年、アカデミーの君島良夫代表が参加した勉強会にあった。
君島代表は、それぞれがアカデミーを運営する元ラグビートップ選手の仲間3名(菊谷崇氏、冨岡耕児氏、三宅敬氏)と、週1回のオンライン勉強会を続けてきた。そこである時、こんな問いかけがあった。
よく生徒募集の際に「誰でも歓迎」と言うが、その「誰でも」の中に、障がいのある子ども達は入っているか?
「そこは意識しておらず、正直なところハッとさせられました」(君島代表)
スポーツ基本法に明記されている通り、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利」だ。
勉強会で認識を深めた君島代表は、すぐにアクションを起こした。登録していたスクール検索サイトの情報を変えることにしたのだ。
「登録サイトの『障がいのある子を受け入れるか』は任意項目だったのですが、勉強会のあと『受け入れる』にチェックを入れました。アカデミーのヘッドコーチが、特別支援学校に勤めていた現役教師ということもありました。そうしたら、障がいはありますが本人がやりたいと言っています、というメッセージが届いたんです」(君島代表)