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「ドイツ語でいきましょう」長谷部誠は日本人記者にドイツ語の質問を求めた…現地記者が見た“電撃引退会見”「最後にあと一言いいですか」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byEintracht Frankfurt e. V.
posted2024/04/18 17:11
日本時間4月17日の20時30分に緊急で会見を行い、引退を表明した長谷部誠。通訳なしで行われた30分ほどの会見で本人が語ったこととは?
「昨年、娘さんと一緒に試合前の入場をしたいという話をしていたと思いますが、彼女はどんな反応を?」
長谷部は、「実は」と前置きをしてから内情を明かしていく。
長谷部「娘にはまだ伝えていません。なぜかというと、彼女に話をしたら、ひょっとしたら学校で友だちに話をしてしまうかもしれません。そうしたらどこからか話がこぼれて、メディアの皆さんが余計に憶測をすることになるかもしれません(苦笑)。だから今日家で伝えようと思います。最後に娘と息子と試合前の入場シーンを一緒にすることができたら素敵だなと思います」
ほほえましい話に、記者もみんな笑顔になる。ただ長谷部はすぐに表情を引き締めると、「でも...…」といってこう話し出した。
長谷部「それが一番大事ではないんです。ここからの4~5週間は、チームと大きな目標を一緒に達成したい。そして最終節のライプツィヒ戦後にスタジアムのファンと一緒に大きく祝いあいたいですね」
質問は日本語? それともドイツ語? と聞くと…
チームのために多大な貢献をしてきた選手が、レジェンドと讃えられている選手が、現役生活の最後に、愛する子どもたちと一緒に入場したいと口にしても、誰が咎めようか。最後に試合に出たいといっても、誰もが理解を示してくれる。むしろ最大限にサポートしようとしてくれるだろう。でも長谷部は長谷部だった。どんな時も自分個人のことではなく、チームの勝利を何よりも大事に考える。だからチームメイトからも、監督・コーチからも、首脳陣からも、ファンからも最大限にリスペクトされるのだ。
僕もこの場で尋ねたいことがあったのだが、果たして何語で尋ねるべきかどうか迷った。ヴォルフスブルク時代から何度も取材をさせてもらってきているが、ドイツ語で尋ねたことはない。それに日本人が何も言わずにいきなりドイツ語で質問しだすのも違和感がある。ドイツ語で「日本語で質問してもいいですか? それともドイツ語のままで?」と尋ねてみたら、広報にちらっと視線を送られた長谷部はすぐに「ドイツ語でいきましょう」ときっぱり言い切った。