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契約金ゼロ円選手のその後…宅配の夜勤→漁師→たどり着いた「野球塾」の仕事 年商数億円の実業家になったオリックス元選手も
text by
喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byNaoya Sanuki
posted2024/04/29 11:05
2000年代前半、契約金0円でオリックスに入団した選手は引退後、どのような道へ進んだのか。その後を喜瀬雅則氏が取材した
「自分が逃げたくないというか、逃げ道を作りたくない、ここで勝負したいという思いがあったんで、一気にこう、投資したという感じなんです。自分にプレッシャーをかけて」
野球塾を開校していた“先輩”の高見澤にも、だから教えを請うたのだ。
「契約金0円選手」とは、何だったのか?
「契約金0円」は、わずか3年間しか採用していない。
たった一人の高卒選手だった高橋は一軍に一度も上がれず、2年目に松坂からホームランを放って脚光を浴びた高見澤も、怪我がたたって、わずか3年でのプレーに終わった。
2人とも、志半ばでピリオドを打たされたようなプロ野球生活だった。
球団の狙いは、うまくハマらなかった。
高見澤も高橋も、その制度に翻弄され、割を食った形になるかもしれない。それでも、高橋は「そのプロ野球の5年間がなければ、この野球塾も成り立っていない」と断言する。
「キツかった時の経験、プロ野球の経験があるからこそ、それ以上、しんどいこともキツイこともないだろうと思ってやれているのが、今に繋がっています。やっぱり僕はうまくなかったから、一軍に出られなかったというのもあるんですけど、その分、いっぱいいろいろな練習をしていただいたり、いろいろな方たちが教えて下さった部分、それが自分の引き出しとなって、今の選手たちに伝えられる部分であったりもするので、それはそれで、すごく良かったなっていうのもあります。それがなければ、今はないんでね」
2人の「契約金0円選手」は、今もなお、野球の世界にいる。
「元プロ野球選手」という肩書を、今、自らの人生に生かしているのだ。