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藤井聡太12歳と豊島将之24歳が出会って10年「タイトルをいずれ独占する」と予測した日も…名人戦「押される時間が長かった」藤井逆転の背景 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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photograph by日本将棋連盟

posted2024/04/13 06:00

藤井聡太12歳と豊島将之24歳が出会って10年「タイトルをいずれ独占する」と予測した日も…名人戦「押される時間が長かった」藤井逆転の背景<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

第82期名人戦に臨んでいる豊島将之九段と藤井聡太名人

 ちなみに、藤井は地元の名古屋から旭川への直行便ではなく、新千歳空港を経由して札幌から旭川への在来線に乗り、車窓から北の大地ののどかな景色を見て楽しんだ。鉄道好きの藤井は、大いにリラックスできたという。

 藤井が王位戦第2局で豊島に逆転勝ちしたことによって、結果的に勝負の潮目が変わった。その王位戦は4勝1敗で防衛した。さらに藤井は、叡王戦(2021年7月~)で豊島叡王を3勝2敗で破って叡王を獲得。竜王戦(同年10月~)で豊島竜王を4連勝で破って竜王を獲得。王位戦(2022年6月~)で豊島九段に4勝1敗で防衛している。

藤井に2ケタ勝利している棋士は豊島しかいない

 かつては「天敵」だった豊島との関係は逆転し、藤井は前記のようにタイトル戦で豊島を4度下した。名人戦の開幕時点の対戦成績は、藤井が22勝11敗と勝ち越していて、直近で豊島に9連勝している。なお、藤井に2ケタ勝利している棋士は豊島しかいない。

 2020年6月、豊島名人が渡辺明三冠の挑戦を受けた名人戦は、コロナ禍によって2カ月遅れで始まった。緊急事態宣言が出て4月と5月は対局がまったくなかった影響で、6月と7月の対局は計14局という過密日程になった。豊島は7月以降に調子を落とし、渡辺に2勝4敗で敗退して名人位を失った。負けが込んだときは勝った棋譜を並べて復調を目指したそうだが、そのときは何をしても良くなかったという。

 豊島はその後、2020年度と22年度のA級順位戦で6勝3敗の成績を挙げたが、挑戦者争いから外れた。23年度は6連勝のスタートダッシュが生き、7勝2敗で挑戦者になった。

 2023年6月、名人戦で挑戦者の藤井竜王は渡辺名人を4勝1敗で破り、最年少記録の20歳10カ月で名人を獲得した。藤井新名人は「名人は特別な重みのある称号。今後はそれにふさわしい将棋を指していきたい」と会見で語った。

 記者から具体的に問われると、「少しでも技術を高め、面白い将棋を指せるように努めたい」と答えた。なお、藤井が考える面白い将棋とは、サーカスの曲芸みたいな派手な立ち回りという意味ではない。終盤で結論が出ないほど難解な将棋を指すことだという。

藤井と豊島は名人戦前、何を語ったか

 藤井名人と豊島九段は今年の名人戦に臨み、インタビューなどで次のように語った。

【次ページ】 藤井と豊島は名人戦前、何を語ったか

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