プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
“メッタ打ち”にされながら史上最年少王者に…安齊勇馬24歳は全日本プロレスの救世主になれるのか?「実力に見合っていないと厳しい声も…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/04/06 17:03
デビューからわずか1年半、史上最年少24歳10か月で三冠ヘビー級王者となった安齊勇馬。3月30日、大田区総合体育館
「一番頼りないチャンピオンかもしれないけど…」
「なんとか全日本プロレスにベルトを取り返しました。今までで一番頼りにならないチャンピオンかもしれないし、不安なチャンピオンかもしれないけれど、オレはこのベルトとともに成長して、この全日本プロレスの揺るぎないエースになってみせます」
ジャーマンスープレックスホールドという文句を言われないはずの正当な技でのピンフォールなのに、プロレスファンの評価はマチマチだった。
どちらかというと逆さ押さえ込みとか、スモールパッケージのような丸め込みフォールのような印象が残った。試合途中の安齊のふがいないパンチのせいでもあるだろう。強さを見せられなかった新王者が、そこにはいた。
むしろ安齊のKO負けの方がすっきりしたかもしれないが、若き三冠王者誕生というニュースは全日本プロレスに新しい時代をもたらすきっかけになるだろう。そうならなければ、安齊がチャンピオンになった意味がない。
中嶋は「負けた気がしない」と言ったが、フォールされたのは事実だ。ガウンの背の「XXスタイル」の文字のXXがはがれかかって「闘魂」が少し見え隠れしていた。どうせなら「闘魂スタイル」むき出しで戦って、もっと非情なそれを見せてほしかった。
「どんな勝ち方でも三冠ベルトを全日本に取り戻したい」
その一心で、安齊は中嶋に挑んだ。若き王者はファンの意見にも耳を傾ける。
「10人いたら10人思うことがある。100人いたら100人の意見があっていい。それらを受け止めながら、この三冠ベルトとともに成長していきたい。ちょっと期待されている若手という目から、これからは三冠チャンピオンとして見られる。さらに厳しい目で見られる。そのプレッシャーに負けることなく、三冠ベルトに見合うプロレスラーになりたい」
24歳の新王者の思い「全日本を好きでいてほしい」
安齊は「全日本プロレスの新時代、全日本のエース」という目の前のゴールに向かう。過去に「格好いいなあ」と思ったチャンピオンは何人もいたという。だが、その名前は口にしない。