濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「圧倒される肉体美」を目指す新人女子プロレスラー…コンテストにも出場するZONESが語る“理想像”「実は体重が10kg減ったんです」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto、本人提供
posted2024/03/26 11:00
Evolution所属の新人女子レスラー・ZONES。右写真はボディコンテスト出場時の肉体
「ビービー泣きました」ZONESが号泣した試合
昨年3月に旗揚げしたEvolutionは全日本プロレスの諏訪魔、石川修司(現在はフリー)がプロデュース。石川はGMも務める。選手の指導も2人が担当し、練習場所は全日本プロレスの道場だ。他の女子団体とはまったく違う環境と言っていい。
所属選手は新人ばかり。Evolutionの興行ではトップ選手に挑むことが多い。ZONESはデビュー戦でデスマッチ王者でもある山下りなと対戦。さらに松本浩代、水波綾といった大型選手と闘ってきた。キャリアの中で印象に残る試合はと聞くと、昨年10月のOZアカデミー横浜大会だと言う。
3wayタッグ戦で、パートナーは松本浩代。対戦したのは橋本千紘&優宇に加藤園子&水波綾。デカくてパワフルな選手たちに囲まれて、敗れたZONESは「ビービー泣きました」。その姿を見て「自分も泣いてしまった」と言うファンもいるそうだ。
「負けたけど、お客さんを巻き込むことができたのかなと。実際にやってみて思うプロレスの魅力は、お客さんと感情を共有できるところ。私が泣いたら泣いてくれる人がいる。一緒に悔しがってくれる人がいる。会社員では味わえなかった感覚です」
EvolutionにせよOZにせよ、マッチメイクからもZONESへの期待が伝わってくる。デビュー1年目の選手には荷が重いカードばかりだが、いわば“実力者枠”に組み込まれているのだ。ZONESは自分が目指すべき存在と対戦し、経験値を上げた。
「最初は知識もないし無我夢中でしたけど、夢のような経験をさせてもらってますね。諏訪魔さん、石川さんに教えてもらえることも、浩代さんたちと試合ができたことも。“これを経験したんだから”という気持ちになれます。誰と試合しても物怖じしなくなりました」
目指すのは「一目見て圧倒されるような肉体美」
現在の課題は技の精度と“間の取り方”だと言う。ZONESは諏訪魔、石川に教わったスタイルでしっかり技を受け、間を取ることで攻防を際立たせようとする。だが女子プロレスはハイテンポで、軽量の選手は矢継ぎ早に技を仕掛けてくる。その中でZONESの動きが遅く見えてしまったり「スタミナがない」と言われることも。
ZONESの闘いは男子の“間”なのだろう。諏訪魔、石川から教わった“全日本プロレス流”のスタイルでもある。全日本のスタイルは“受け”重視と言われる。
「とにかくしっかり受けるというのを教わってきました。しっかり受けることでダメージが最小限になるし、迫力が伝わりやすい。どんな技でも受けられるのがプロレスラーの凄さなんだという価値観です。自分も対戦相手に大技をかけられると嬉しいですね、痛いけど(笑)」
大技をかけられるのは、それを「受ける技量がある」と相手に判断された証なのだ。
他団体参戦で試合数が増え、なかなか筋トレができないのも悩みの一つ。試合で傷めた部位を避けながらのトレーニングになってしまうところもある。
「実はレスラーになってから体重が10kg減ったんです。でも試合で動くために必要な筋肉だけじゃなく、お客さんが一目見て圧倒されるような肉体美もほしい。あらゆる面で“誰が見ても、どう考えても強い”と思われるレスラーになるのが理想ですね」