メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
なぜ水原一平通訳は“狙われた”のか? カジノ専門家が解説する違法賭博業者の思惑「大谷翔平に近い立場」「業者のゴールは八百長」
posted2024/03/26 06:02
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph by
JIJI PRESS
3月21日、開幕2戦目を前にしてドジャース・大谷翔平の通訳・水原一平氏が解雇されるという衝撃的な報せが世界を駆け巡った。解雇の発端となったのは、ESPNやロサンゼルス・タイムズなどが報じた大谷の口座からの賭博業者への送金、そして水原氏の違法賭博への関与疑惑だ。そもそも、なぜ水原氏は賭博業者の“標的”となったのか。そして、野球以外のスポーツへの違法賭博でもMLBの処分対象になる理由とは? アメリカのスポーツベット(スポーツ賭博)について、海外のカジノ事情に詳しい国際カジノ研究所所長の木曽崇氏に話を聞いた。
出会いの場となった「ポーカー」
発端は3年前にさかのぼる。2021年、カリフォルニア州サンディエゴ。今月20日の開幕戦で対戦したパドレスのお膝元で水原一平氏はポーカーを楽しんでいた。水原氏は“プレーヤー”として、一人の男と出会う。現在、違法賭博などの疑いで捜査を受けているマシュー・ボウヤーだ。水原氏が「マット」と呼ぶその男を通じて信用貸しで賭けをするようになったのが全ての始まりだった。
接点となったポーカーはカジノ施設のない日本では馴染みが薄いが、アメリカ合衆国カリフォルニア州では合法の賭博だ。しかし、ポーカーテーブルが今回のように違法賭博への「入口」にもなってしまうことがある。海外で活動する日本人ポーカープレーヤーはこう語る。
「高額な掛け金のテーブルでプレーしていると話しかけられることはよくあります。ポーカーは待ちの時間が長く、会話が発生しやすい。見知らぬヤツから『スポーツベットは普段どこでやっているの?』なんて聞かれるなんてこともありました。大谷選手の通訳でTVに映るような有名人であれば近寄ってくる輩も多いことでしょう」
スポーツ賭博がプロスポーツの収益を“裏支え”
そもそもスポーツの勝敗などを賭けの対象にするスポーツベットは、米ネバダ州以外ではもともと禁止とされてきた。しかし、2018年に連邦最高裁判所が各州に判断を委ねる決定をし、合法化する州が急拡大。現在は38州で合法化され、国際カジノ研究所所長の木曽崇氏によれば「ブックメーカー施設での放映権料や予想するにあたってのデータ提供料がプロスポーツ団体の収益を裏支えしてきた側面もある」という。