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なぜ水原一平通訳は“狙われた”のか? カジノ専門家が解説する違法賭博業者の思惑「大谷翔平に近い立場」「業者のゴールは八百長」
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byJIJI PRESS
posted2024/03/26 06:02
開幕2戦目を前にチームを去った水原一平通訳。関わりを持った違法スポーツ賭博で捜査されている業者はなぜ水原氏に近づいたのか
狙っていたのはお金だけではない
一方でカリフォルニア州ではスポーツベットは違法。つまり同州でスポーツベットを扱うブックメーカーは原理上すべて「違法賭博業者」となる。そういった業者にとってポーカー会場を含むカジノはギャンブラーという「潜在顧客」がいる重要な“営業先”なのだ。ただ、水原氏に近寄る業者の思惑は、単に「お金を持っていそう」というだけにとどまらない。業者の思惑について、前出・木曽氏はこう説明する。
「もちろんお金を落としてくれる、有名人が顧客になるという利点もあると思いますが、本当の目的はその先。八百長協力者にしてイカサマを手伝わせる。要するにゴールは八百長なんです。違法なスポーツベット業者にとって、賭けの対象になるスポーツの関係者は選手以外でも格好の標的になる。そして水原通訳はドジャースの投打のキーマンである大谷翔平の情報を知りうる立場にあった。ポーカーで対面して水原氏の存在を知り、大谷の通訳だからこそ『使い勝手がある』と見て、アプローチした側面はあると思います」
多額の貸付が許された「大谷の親友」という立場
業者はどのようにして、取り込んでいくものなのか。
「最初はVIP待遇をして、どんどん貸し付けていき、借金が膨らみ、どこかで返済が滞り始めたときに、『だったら……』とバーターで『情報をよこせ』だとか、『誰かを紹介しろ』とか話を持ちかける、というのが彼らの手口です」(木曽氏、以下同)
実際、ボウヤー氏の代理人は米紙『ワシントン・ポスト』に対し、借金が数百万ドル(日本円で数億円単位)に膨らむ中、貸付を続けていた理由として「大谷の親友であったこと」を挙げている。大谷との関係によって多額の借金が許容されていたのだ。
野球以外のスポーツ違法賭博に関与すると何が問題?
「標的」となった水原氏は実際、どのようにスポーツベットと関わっていたのか。これまでの報道を整理すると、まず水原氏はESPNの取材に対し「野球賭博は100%していない」と否定している。同時に別のスポーツ競技への賭博をしたことは認めているが、合法だと思っていたと証言。一方で業者側は違法賭博事件に関連しているとして連邦検察によって捜査中の身だ。今後のMLBでの調査で違法賭博への関与が認められた場合、「コミッショナー判断でペナルティの対象となる」(MLBの不正行為に関する規則『ルール21』)。野球以外のスポーツであっても、違法賭博関与がMLBによる処分対象となるのには理由がある。