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甲子園で「投げすぎた男」は「投げないエース」佐々木朗希をどう育てた?…川越英隆コーチが語る“令和の怪物”のリアル「骨端線もまだ閉じてなくて」 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byBUNGEISHUNJU

posted2024/03/19 11:03

甲子園で「投げすぎた男」は「投げないエース」佐々木朗希をどう育てた?…川越英隆コーチが語る“令和の怪物”のリアル「骨端線もまだ閉じてなくて」<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

“令和の怪物”こと佐々木朗希。大船渡高3年時に163kmをマークした「投げない逸材」を川越コーチはどう育てたのか 

 川越としても、高校時代から追い込むことが当たり前だと思っていただけに、佐々木に対して「もっと練習させたい」と、ジレンマを抱く瞬間もあったのだと明かす。

「僕らが現役だった時代と今は野球も変わってきているから比べようがないですけど、正直、『もっと投げさせていたらどうなっていたんだろう?』って思うことはあります。投げていかないと掴めない感覚だってありますし、なかには球数を投げたほうが伸びやすいピッチャーもいますから。

 そこは指導する側の見極めが大事になるし、そういう目を養わないといけないんですけど、なかなか難しいですよね。『こうしたほうがいい』という正解がない世界ですから」

川越は今年からソフトバンク4軍コーチに就任

 川越は11年間コーチとして在籍していたロッテを22年に退団し、今年からソフトバンクの四軍コーチとして再びプロのピッチャーの育成に励むこととなった。

 支配下登録を目指す育成選手の底上げをメインとするカテゴリーであるため、佐々木のような怪物はいない。それでも、150キロを超えるボールを投げる金の卵はいる。

 未知の領域での指導に携わった経験。川越はこの財産を、ソフトバンクの未来に投じる。

「ホークスの四軍にも球が速い子はいますけど、それをコントロールするとか、ボールをちゃんと操れるピッチャーってなかなかいないんですね。だから僕らは、彼らに野球に対する基本的な考え方や取り組み方をしっかり教えて、サポートしていかないといけません。チームに一握りもいないような支配下選手ですけど、できるだけ多くの選手になってほしいですし、そこまでのレベルまで引き上げさせるのが僕らの仕事だと思っています」

 ロッテを離れて1年余り。川越の“教え子”は今や、「メジャーリーグに最も近いピッチャー」と呼ばれている。

 令和の怪物のこれから。

 この答えだけは、はっきりとわかる。

「間違った方向を正してくれる指導者がいるんで、勝手に伸びていきますよ。もっとすごいピッチャーになると思って見ています」

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