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なぜアルゼンチンに? 高3でプロ契約の至宝・貴田遼河18歳が驚きの移籍決断「オファーはアジアカップ帯同中に」「不安はまったくない」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/03/08 11:00
名古屋グランパスからアルヘンティノス・ジュニアーズに期限付き移籍した貴田遼河(18歳)。出国前の空港で、その思いを訊いた
貴田 名古屋のサポーターは日本一だと思っているんですけど、そのサポーターの前でプレーできたことですね。ヴィッセル神戸戦(2023年5月3日)なんか満員で、あの雰囲気の中でプレーできたのは一生の思い出になると思うし、絶対に忘れられない光景だなって。
――公式戦デビューやプロ契約、ルヴァンカップでの2ゴールではなく、サポーターの存在だと。
貴田 そうですね。海外に行く前に名古屋のサポーターの前でプレーできたのは、すごく幸せなことでしたね。名古屋では結果を残せなかったですけど、海外で活躍することで喜んでくれるサポーターがいるって自分は信じているので。それは今のひとつのモチベーションになっています。実際に、いろんなメッセージも頂いたので。感謝を伝える意味でもアルゼンチンで結果を出したいと思いますね。
――去年1年間、トップチームでプレーして、成長はどう感じていますか?
貴田 最初はうまくいかなかったですね。ユースの頃は、ボールを持ったら特に周りを見てなくても、自分のタイミングで仕掛ければ通用していたんですけど、トップに行ったらそういうわけにもいかなくて。周りが見えてなかったり、次のプレーを考えてなかったりすると、潰されるシーンが増えて。そういうことを練習からたくさん感じることができたので、プロのスピードに順応するところでは、すごく成長できたと思います。
――身体も大きくなりましたよね。
貴田 だんだん当たり負けもしなくなったと思います。もともと体を当てることを苦手としていたわけではないんですけど、トップチームに行って、当たり負けすることが多くなって。それで筋トレを頑張ったら、やれるようになりました。練習が終わってから学校に行かなきゃいけないので、やれる時間は限られていたんですけど、練習前に筋トレをしたり、意識的にやりましたね。
「南米は厳しいと思うけど頑張れよ」
――長谷川健太監督は、どんな存在でした?
貴田 結果を出したら使ってくれるし、その試合で悪かったら、次の試合ではメンバーに入れない。厳しいですけど、すごくはっきりした監督だったので、FWの自分としては、ありがたかったですね。健太さんに認めてもらって起用されることがモチベーションになっていたので。週末のメンバーに入るために今日の練習で絶対に点を取ってやるとか。そういうところはモチベーション高くやれたかな、って思います。
――今回の決断に関して、健太さんはどんな言葉をかけてくれた?
貴田 「南米は厳しいと思うけど頑張れよ」っていう言葉を頂きました。後押ししてくれましたね。
――山口素弘さん(GM兼アカデミーダイレクター)や中村直志さん(アカデミーサブダイレクター)からは?
貴田 直志さんは中学2年生くらいからずっと自分を見てくれて、応援してくれて。何かあるたびに連絡をくれて、すごくお世話になった方なので。6年間ぐらいですけど、変わらず応援してくれて、今回の件もまずはすごく応援してくれて、「頑張れよ。何かあったら連絡して」と言ってくれました。モトさんからも「決まった以上、やるのは自分。感謝の気持ちを忘れずに、強い覚悟を持って頑張れ」って言われました。
――グランパスの先輩方からは、どんな言葉をかけてもらいましたか?
貴田 (オランダでのプレー経験のある前田)直輝くんは「(海外は)日本とは全然違う。行かなきゃわからないことがたくさんある」と言っていましたね。「自分で確かめるのが一番早い」って言っていて、自分も行ってみたいなって。モリシ(森島司)くんともすごく仲良かったですけど、モリシくんは「遼河のスタイルに南米のサッカーが組み合わされたらどうなるのか、すごく楽しみだね」と言ってくれて。「オフシーズンに帰ってきたとき、名古屋の練習に参加できるようなら来なよ。すごく楽しみだから」と言ってくれました。
――キャスパー・ユンカーという生粋の点取り屋と一緒にプレーして、どうでした?
貴田 キャスパーは点を取ることだけに集中している感じで、こぼれ球に対する反応の速さがすごかったですね。普段はサボっているように見えますけど、一瞬を逃さないというか。ゴールに向かう意識やスピードは、すごく感じました。オン・ザ・ボールのところはあまり人の真似をしたくないんですけど、オフ・ザ・ボールの動きの質だったり、意識のところだったりはキャスパーをはじめ、いろんな選手から学ばせてもらいましたね。