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バレーボールPRESSBACK NUMBER
新人選手が入社3カ月で異例の退社「申し訳ないことをした…」バレー日本代表・山本龍(23歳)はなぜルーマニア移籍を決断したのか
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2024/02/23 11:04
ルーマニアでの生活を語ったバレーボール男子日本代表・山本龍(23歳)
初めて日本代表に選出され、6月の時点ではB代表だったが、A代表に招集される可能性も十分にあり、パリ五輪出場が突如現実味を帯びた。目の前に現れたそのチャンスを何としても掴みたい。そこで改めて23-24シーズンの過ごし方を考えた時に疑問が生じた。
「自分の立ち位置で、今シーズンまたサントリーで控えセッターだったら、(パリ五輪の代表入りに向けて)どこを評価してもらえるんだ? どこでアピールするんだ? と。そう考えた時に、やっぱり外に出て、出場機会だったり経験だったりを得て見てもらわなきゃいけないと思いました。自分のやりたいことを我慢してチャンスを逃すより、やっぱり今、行動するべきだなって。22、23歳って、まだ時間があるようで、ないですからね。
サントリーには申し訳ないことをしたなと思います。じゃあ来んなよって話で、僕のわがままですけど、状況が変わって、新たにやりたいこと、挑戦したいことが見つかった中で、そういう決断をさせてもらいました」
「日本に戻った時に活かされることを信じて」
移籍先を探し始めたのは6月。既に各チームの布陣が決まっている時期のためエージェントからは見つからない可能性もあると言われたが、ブカレストからオファーが来た。
「初めての海外で不安はありましたが、リベロの渡辺(俊介・現東レアローズ)さんが所属していたチームなので、大丈夫だろうと」飛び込んだ。
ブカレストにはオーストラリア代表の198cmの長身セッター、ニコラス・バトラーも所属しており、試合では山本とバトラーが併用されている。
「半々なので、出られない時には焦りというか、ふと考えることはあります。でも自分が選んだことだし、海外に行きたいという気持ちもあったので。言葉もできない中、本当に“飛び込んでる”って感じですけど。
来てよかったです。Vリーグである程度やってから海外に行くのが普通で、自分はセッターとしては初めての、誰も行っていない道を進んでいると思うので、経験談は、違うポジションの人からは聞けますけど、自分にしかわからないところもあると思います。それが代表や、日本に戻った時に活かされることを信じて。それに、人として、いろんな文化に触れたり、いろんなつながりを持てることもプラスだと思う。現役はあと10年ぐらい、長くて十数年しかできないですけど、その先にもつながるいい経験ができているのかなと、めっちゃ思います」
“いい経験”。その中には歯がゆい、悔しい経験も含まれる。
後編では、ルーマニアで山本が直面した壁や、日本代表のセッター争いへの思いに迫る。
(つづく)