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「最初に『女性トイレをキレイにしよう』…これまでと発想が違った」元ベイスターズGMが振り返る“黎明期のDeNA”「南場さんの熱がスゴかった」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/28 11:00
2018年に横浜のGMを退任した高田繁氏。現在はフェローとして同チームに関わるが、運営とは距離を置いているという
――フェローなんてハイカラな肩書ですけど、具体的には何をされているんですか?
高田 1カ月に1回ぐらいDeNAの南場(智子)会長や岡村(信悟)社長たちと一緒に横浜スタジアムの小部屋に集まって試合を観るんですよ。そのときにね。おれは説明をするの。この選手はどうだ、このプレーはなんて話をしてるんだけど……まぁ、GMの時とは見方がぜんぜん違うよね。あの頃はチームの成績も、個人の結果も気になって気になって、胃がキリキリキリキリと痛む。どのように考え、決断するべきか! なんてことをずっとやってたでしょ。
――GM時代の高田さんはいつも険しい顔をされていた印象があります。
高田 そうだねぇ……。あの仕事は悪役になることでもあるからね。選手の肩を叩くんだもん。チーム作りをするということは、想像以上の決断力が必要になる。すべての責任を自分が負うんだからね。もちろん能力は必要だけど、それ以上に肝っ玉が据わっていないとできない。
――戦力外にトレード、FA残留要請。誰を残して誰を斬り、どんなチームを作っていくのか。ネットの声なんか聞いていたら死んでしまいそうです。
高田 俺はアホやからなんも気にしなかったけどな。失敗したら俺が責任とるんやからね。ファンの人は今いる選手みんなに残ってもらいたいのは当然や。「FAだけど出てっていいよ」なんて人はいないし、戦力外だって同じ。そこをリリースする決断もするわけだから、嫌われ役になるのがイヤな人はこの仕事をできないよね。
だから、今はもう気持ちがずいぶんと楽になったよ。チームに何かを言うこともないしね。ただみんなと一緒に応援してるだけや。いや、しかし南場さんは、すごいね。誰よりも応援の熱が入ってる。その熱にあてられて、俺も気がつけばベイスターズファンと同じですよ。
――高田さんが、ですか?
高田 そうねぇ。もちろん、野球を見れば長年携わってきたからねぇ。『あの選手のここがいいな』。『こういう風に育てたいな』、なんてふと思うことはあるけど、それは立場的に絶対に口には出さないよ。今の人たちが頑張っているところだからね。
「チーム運営はフロント主導で」
――DeNAになった当初、『人が変わろうとも球団としての指針はぶらさない』というお話を聞いたのですが、高田さんの時代のチーム運営の方針は、その後も編成のトップになった三原(一晃)さん、萩原(龍大)統括本部長と、変わらずに受け継がれているのですか?
高田 うんうん。基本的にはそうだと思うよ。チーム運営はフロント主導でチーム作りをやっていく。それは最初に建てた柱として目指したものだったよね。ただ、俺の時は『チーム作りに関しては私のほうですべてやります。その代わり現場には一切口を出さないから』と言ってね。チーム作りをするフロントと、戦う現場との一線を引かせた。
メジャーのGMほどの力や権限はないけど、俺もチーム作りに関しては『これでいこう』という意志は通してきた。ただ、今はまた事情が違うからね。基本的には同じ方針でも、人によってアプローチは変わる。今は現場と意見交換をしながらやっているのだと思いますよ。