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人的補償パニック「あれだけ世間騒がせた…説明の義務ある」見えない移籍交渉のナゾ…選手会・會澤翼が語る“制度を廃止すべきか?”
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/16 11:05
ソフトバンク山川穂高の人的補償で西武に移籍した甲斐野央
甲斐野に対するケアという点はクリアになっている。甲斐野の入団会見時、西武はファンからのウェルカムメッセージを本人に手渡すなど最大限バックアップしていた。
人的補償で「移籍したい選手もいる」
補償問題は今後も議論を重ねていく必要があるだろう。會澤会長は今回の問題をこう総括した。
「補償を金銭だけにしたら、(人的補償は発生せず)所属していたチームにポスティングのようにお金が入ってくるので、選手としては出やすいとは思います。でも、さきほども言ったように、移籍したい側の選手もいる。今の時代、「人的補償」という言葉も含めて考えていく必要があるのかなと思います。
(人的補償の代替として)ドラフト指名権の譲渡という案についても耳には入ってきています。12球団の戦力の均衡をそのまま保ちたいという(球団側の)意見もありますし、ドラフトは一大イベントでもある。ご意見も多々あると思いますが、選手会はいろんな人の意見も考えていかなくてはいけない」
タンパリング防止…「抜き打ち検査」はあり?
今後、選手会が取り組む問題として、人的補償の見直しはプライオリティが低いのか? そう尋ねると、會澤会長は否定した。
タンパリングの防止に向けて抜き打ち検査を実施すべきでは?の問いには「ドーピングの(調査の)ように、ということですよね」と答えた後、松本弁護士が説明を加えた。
「球団と選手会で合意できるのであれば、第三者委員会を設立してチェックしてもらうといった方法もいいんですが……そのような制度がプロ野球界にできたことはありません。ただ今の時代を考えると透明性が大事になっていることは理解しています」
ファンを置き去りにしない制度を選手会はどこまで突き詰めて考えていけるだろうか。つづく第2回では、ロッテ・佐々木朗希の脱退における選手会の忸怩たる想いについてお送りする。
〈つづく〉