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ワリエワのドーピング騒動、処分決定後も残る“多くの謎”「なぜ個人順位とポイントは繰り上がらない?」猛反発のロシアは今後も異議申し立てか
posted2024/02/06 11:01
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
1月29日、CAS(スポーツ仲裁裁判所)が、2022年北京オリンピック開催中に過去のドーピング陽性疑惑が出たカミラ・ワリエワに、4年間の資格停止処分を言い渡した。
2年もかかってようやく出た裁定。だがこれですっぱりとけりがついた、という訳にはまだいかない。その理由と、改めてワリエワのドーピング違反事件を振り返って要約してみる。
“結果分析の遅れ”が招いた泥沼
北京オリンピック団体戦が終了した2022年2月7日、突如「団体戦の表彰式が延期」という発表がなされた。「ロシアの選手にドーピング違反があったらしい」。そんな情報が断片的に流れた後、ワリエワが2021年12月に行われたロシア選手権で提出したサンプルから陽性反応が出たことがロシア反ドーピング機関(RUSADA)から発表された。12月のサンプルの結果が出るのにひと月以上も時間がかかった理由は、コロナ禍により分析にあたったストックホルムの検査機関に大幅な作業の遅れが出ていたためとされている。
もしこの分析が迅速に行われていたなら、ワリエワは2022年欧州選手権、そしてもちろん北京オリンピックにも出場ができなかった。判明したのがオリンピック開催中、しかもロシアが団体戦で優勝した直後というタイミングで、この事件は世界中から大きな注目を浴びることになったのだ。
一転して成人並みの“厳しい処分”に
まだ個人戦を控えていたワリエワは、本来ならすぐに出場停止になるはずだったが、コーチチームがCASに提訴。CASはワリエワが当時15歳という要保護年齢であることを理由に、競技続行を許可する。だがこれがさらに、騒ぎの火に油を注ぐことになった。
ワリエワはプレッシャーに耐え切れず、フリーで崩れて総合4位に終わる。もし彼女が個人戦でもトップ3に入っていたら事態はさらにこじれていただろう。フリー演技後、「どうして途中であきらめたの? 答えて」とエテリ・トゥトベリーゼコーチに詰問されたワリエワは「これで女子は表彰式ができるし……」と弱々しく答えたという。