「OK、律！ ハーフタイムにゆっくり話そう。前半はこのまましっかり締めてくれ」

　その言葉通り、1－0で前半を締めくくると、ロッカールームに戻って名波コーチや毎熊と話し、最終決定権を持つ森保一監督の許可もとって、後半から立ち位置を修正した。

　後半になって堂安がパスを受ける回数が増え、日本の右サイドの攻撃が活性化された。

自分とタケが中で…マイクは追い越してくれますから

　時間が経つにつれて攻撃が活性化されたのは、毎熊との相性の良さも関係している。

「マイクくんはサイドラインで勝負してくれる選手ですし、1対1も強い。だから、自分も中に入ってプレーできます。数試合しかやっていないですけど、彼みたいなプレースタイルの選手とはやりやすいので。そして、特に、そこにタケ（＊久保建英）が絡んでくるときですよ！ 自分とタケが中でチョンチョンとしている間に、マイクはサイドで追い越してくれますから」

　その効果については毎熊も同じ意見だったようで、後にこう話している。

「堂安選手と久保選手。より近い位置で2人の良さを出すために、考えながらポジショニングを取りましたけど、スムーズにできていたと思いますね」

森保監督の指示を受ける久保と堂安　©Kiichi Matsumoto

　ただ、それだけで満足しないのが堂安らしい。

　例えば、カタールW杯のドイツ戦でゴールを決めたあとも、満足した素振りは少しも見せなかった。浮かれたムードが漂っていたあの夜、堂安はこう話していた。

「たかが1点です！ 僕たちの目標はもっと上、優勝を目指しているので、これだけで満足せずにやりたいなと思います」

　しかも、そう考えていたのは堂安だけではなかった。あの試合を現地まで観戦に来ていた母親から「うちらは、あのゴールが決まったとき10年ぶりに抱き合ったわ！」と報告を受けたのだが、父親からはこうも言われた。

「お前、2点目を取れたやろ？」

　息子がW杯で殊勲のゴールを決めたくらいでは満足しない父親が堂安にはいる。そんな存在がハングリー精神を培うために大切だったのは言うまでもない。

　だからこそ、インドネシア戦の堂安はこう付け加えるのを忘れなかった。

「でも、もっとマイクくんを活かせると思うし、彼も僕のことをもっと活かしてくれるはず。試合を重ねるごとに（関係性や機能性は）良くなっていくと思いますね」

「今日は彼（マイク）がスーパーでした！」

　果たして、バーレーン戦で2人の関係が改善されたのは攻撃のときだけではなかった。堂安は前半から高い強度で相手にプレスをかけ続けた。強度が高いあまり、前半の日本の6回のファールのうちの半分を堂安が一人で記録したほど。

　ただ、そこにも毎熊の良さを出すという明確な狙いがあった。

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