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プロ野球亭日乗BACK NUMBER
デーブ大久保が明かすジャイアンツ若手野手の成長秘話「原監督と阿部ヘッドから“真逆のこと”を言われた門脇は…」「秋広はねぇ…頑固なんですよ」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHaruka Sato
posted2024/01/30 11:10
V奪還を目指す巨人の課題と期待を熱弁する大久保氏
門脇を「育てたい理由」
――打つ気がないような素振りで待つ?
大久保 例えば“待て”のサインが出て、ストライクがきたときって、バッターはめちゃめちゃ球が甘く見えるんです。『いま打てたわ。何で“待て”なんだよ』みたいな。それって理由があって、顔を振っていないから、ボールがよく見えるんです。近本の見送り方ってそうなんですね。打たない感じで、そういう見え方をしているんですね。顔を振って引っ張りにいくと、肩が開くからむしろ引っ張れない。ショートゴロはヒットでいいよっていう慎之助のアドバイスのいいところは、肩が開かずに球が長く見られて、門脇らしいバッティングができる。そういう待ち方が近本なんです。シーズン終盤はそういう待ち方ができるようになってきていた。そこでバットが立ってくればもっとヒットになりやすい。
――ボールの待ち方が良くなったことが、門脇の去年の活躍に繋がったのだ、と。
大久保 それともう1つ、彼には首脳陣がどうしても育てたいと思わせる理由がありましたよね。
――育てたい理由?
大久保 原監督がシーズン中に調べていたのですが、坂本(勇人内野手)や岡本(和真内野手)らいまの主力選手に学生時代にキャプテンをやっていた選手はいないんです。アマチュア時代は人間教育が第一。指導者はやはり、キャプテンシーとかを見るわけですが、そこではあまり目立ったものがなかった、ということなんです。でも、門脇は高校、大学とキャプテンをやっていた。そういう子がチームの中心に立つことの必要性は、去年の首脳陣の中でも課題として出ていました。だから何とか門脇を育てなきゃ、という話が早い段階から出ていたんです。もちろん結果は大事です。でも、そういう思いもあるので、去年の原監督は門脇については我慢した。あと一人、別の意味で我慢したのが秋広でしょう。この2人について原監督はかなり我慢して使っていました。そこも彼らが成長していく中で大きなポイントだったと思います。
お前さん、そこまで行ってないぞ
――秋広優人については、昨年はそれなりに結果を残しましたが、その一方で終盤はもう一つ、溌溂さを失ったようにも見えました。研究されたということですかね?
大久保 秋広はねえ……頑固なんですよ。彼は自分は追い込まれてからが勝負、持ち味と思っているはずです。去年、中山(礼都)と話をしているのを聞いたことがあるんですけど、『お前、追い込まれてからが得意だよな』と言う中山に『そう、それが持ち味』って秋広が答えていた。『これだ!』って思いましたね。僕は彼が伸びるためには、まず早いカウントからしっかり振ることだと思います。一軍のピッチャーは追い込まれる前に打たないと勝負にならないから。一軍のピッチャーはフルカウントになってからは、ボールになるフォークとか、ほぼボール球を投げるんですよ。
――確かに昨シーズンも5月に本塁打がポンポンと出た時期があって、あのときは早いカウントから積極的に打っている印象がありましたよね。
大久保 本当はあれなんです。でも、本人は初球から打ってセカンドフライ、サードフライがもったいないような気がするんじゃないですか? いいんだよ、それで、って言っていたんですけどね。チーム的には球数を投げさせるのが良いわけだから、ダメなんですけど。でもそれは追い込まれてから考えろ、ということ。あとちょっとヤマを張りすぎているかもしれない。本人に聞くと真っ直ぐでいっている、と言うけど、真っ直ぐに張っていて、真ん中付近の真っ直ぐを見逃すことはないと思います。だとすれば変化球を待って真っ直ぐを打てるようにならないとダメなんですよね。