山本美憂のエール「未奈ちゃんは大丈夫ですよ」

　ブラジリアン柔術や打撃の練習に通うのも、強さというベースを大事にしたいからだ。打撃を学ぶのは山本美憂が率いるジムKRAZY BEE。ボクシング世界王者の吉田実代から指導を受けたこともある。

「大晦日はRIZINを会場に見に行きました。美憂さんの引退試合、本当によかった。負けてしまったけど、勝負に対して絶対に妥協しなかったですよね。そこは本来、プロレスも同じはずだと思います。今の私に必要なのはその部分だなって」

　筆者は試合を終えた美憂に、白川についてのコメントを求めた。思うように結果が出せない彼女に、何かアドバイスはないかと。美憂はこう答えてくれた。

「そこはシンプルなんです。結果を出すには強くなるしかない。強くなるには練習するしかないです。毎日毎日コツコツやることでしか結果は出ない。でも未奈ちゃんは大丈夫ですよ。ウチのジムでも頑張ってますから」

　白川がビッグマッチの翌日も道場で練習していたことを、おそらく美憂は知らなかった。それでも、師弟が考えていたことは一緒だった。

両国大会翌日、ともに練習した星来芽依とのタッグも実現　©Essei Hara

「なんだか記事にしにくいことばかり言っちゃいましたよね」

　強くなる努力を欠かしていないからこそ、現状を変える行動力も生まれる。

「ユニットもあり方を考えないといけない。対世界というテーマは変わらないけど、まず固定メンバーを増やさないと」

　動いたのは1月20日の高田馬場大会だ。白川は復帰した月山と組み、舞華＆HANAKOと対戦。試合後、所属ユニットが解散したばかりの舞華に共闘を呼びかけた。舞華はHANAKOを誘い、クラブ・ヴィーナスのメンバーであるジーナも再来日。新ユニット結成で、反撃のための陣容が一気に整った。赤いベルトの王者・舞華と組んでも白川はリーダーを譲らず「二本柱」という形に。タイトル戦線にどう向き合うかも気になるところだ。

「白いベルトを短期間で落としてしまったことは事実。でもそこで落ち着くつもりはないので。長い目で見た時に“それも途中経過でしかなかったね”となればいい。私をずっと見てくれてる人は分かると思います。白川未奈は今みたいな時こそ真骨頂を見せるレスラーなんだって」

結成された新ユニット。左から月山、ジーナ、舞華、白川、HANAKO　©Norihiro Hashimoto

　這い上がり続けて今がある。自分1人のキャリアでもなくなった。30歳を過ぎてデビューした白川は、結果を出すことで「何をするにも遅すぎるということはない」という“希望”を示したいのだと言う。女性の魅力＝若さという風潮への抵抗もある。

「なんだか記事にしにくいことばかり言っちゃいましたよね」

　インタビューの内容を気にしていた白川だが、たまった鬱憤を隠さないから這い上がる姿が際立つのだ。レスラー人生は長期戦。起伏があるから追いかけがいがある。