濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「記事にしにくいことを言っちゃいました…」白川未奈が明かす“屈辱タッグ” ロッシー小川の“ホメ言葉”に「このままじゃダメ」と奮起した理由
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2024/01/26 11:03
舞華との新ユニットを結成し、今後の動向が注目される白川未奈
もちろん、レスラー人生にはうまくいかない時期がつきものではある。常に順風満帆で勝ち続ける選手などいない。だから「下道」から追い抜くこともできるのだ。しかし白川は、今の状況についてタイミングや巡り合わせの問題なのだとは思わなかった。これはキャリアの危機なのだ。現状に甘んじていては、タイトル戦線に浮上できなくなるかもしれない。
「何でしょうね。私のコンプレックスがそう思わせるのかな」
“勝ち負けだけではない”のが白川の魅力だが…
グラビアタレントとしてABEMAなどのバラエティ番組によく出ていた。ただ地上波ゴールデンには届かない。プロレスでは、新人時代から「ここでこの相手に負けるのか」という試合がしばしばあった。スターダムでも中野たむ、ウナギ・サヤカとの6人タッグ王座以外は長期政権が築けていない。そんなキャリアのありようが、危機感を募らせる。
「結局、私は組まれた試合を頑張ってこなしていたらチャンスがくるというタイプじゃないんですよ。必死になって、アピールして、野望も目標も悔しさも口に出していかなきゃいけない。もちろん実力も高め続けないと」
プロレスには、勝ったり負けたりしながら物語を紡いでいくという面がある。負けにも意味があると言えばいいだろうか。対戦相手は単なる敵ではなく、観客に向けて試合を作り上げる共同作業者でもある。出場選手全員で一つの興行を構成し、盛り上げていくのだ。白川は努力家で上昇志向が強いのだが、同時にプロレスの“勝ち負けだけではないいろいろな側面”を担う姿も似合う。
「やっぱりもともとプロレスファンなので、そういうところも魅力なんだっていうのが体に染み込んでるんですかね」
けれど、今は勝って状況を変えたい。両国大会の翌日には、いてもたってもいられず道場に向かった。昨年、スターダム入りした星来芽依も一緒だった。女子プロレス史上最大のスター、長与千種の団体マーベラスで育った星来には「学ぶことが多いんです」と白川。
「受身にしろロープワークにしろ、基本が凄くしっかりしてて。芽依の得意技のドロップキックもそう。実は私、ドロップキックをちゃんと教わったことがないんです。デビューした団体では一通り技を練習してみて、得意なものを試合で使うというやり方でした。自己流でいいから個性を伸ばせと。そういう育ちの私が知らないものを、芽依はたくさん持ってますね。基本とかベースみたいなものは常に意識してます」