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今永昇太はDeNAに何を残したのか? 山崎康晃、三嶋一輝、戸柱恭孝の証言で振り返る「“投げる哲学者”がいた8年間」…牧秀悟は「想いを継承したい」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byUSA TODAY Sports/Reuter/AFLO
posted2024/01/15 11:01
シカゴ・カブスの入団会見を行った今永。会見後にはファンとのイベントにも参加するなど大忙しの一日となった
「あの決勝戦は、短いイニングを投げることを踏まえての投球でした。相手はオールスターだったかもしれないけど、あのクラスの選手に投げ込んでいくと考えたとき、仮に6回100球投げるとしたら何点取られてしまうのか。自分が自信を持って通用すると思った瞬間はなかったし、実力として足りない部分が露呈してしまったかなって」
シリアスな表情で今永はつづける。
「ただ投げたことで、自分が抱いていた不安と一致したものはあったので、そこを埋められさえすればある程度のパフォーマンスは出せるのではないかと思いましたね」
この言葉を聞いたとき、気持ちは完全にMLBにロックオンしているな、と感じずにはいられなかった。果たして抱いていた不安は解消されたのか。その答えはシカゴの空の下で示されることになるだろう。
数字に表れないエースの凄み
DeNAでの8年間は、過ぎてみればあっという間に感じられる。かつての大黒柱である三浦大輔と現役時代最後の1年間をともに過ごし、薫陶を受けエースの座を継承した。野球ファン誰もが「ベイスターズのエースといえば今永」と認識していたはずだ。
NPBでの通算成績は165試合、64勝50敗、防御率3.18。ノーヒットノーラン達成や最多奪三振のタイトルを獲得したが、怪我や手術などもあり二桁勝利を挙げたのは3シーズンだけ。数字だけを見ると絶対的エースと呼ぶには突出したものではない。ただ、ここ一番での胸のすくようなピッチング、そして人間性や存在感を加味すると、今永はDeNAにとって欠かすことのできない精神的支柱だった。
常にピッチャーのキーマンは昇太
チームの先輩たちは次のように証言する。
プレミア12などで侍ジャパンとして一緒に戦い、ともにチームを支えてきた戦友の山﨑康晃は「先発陣を中心となってまとめてくれていたのが(今永)昇太ですよ」と断言する。
「実力は言うまでもなく、うちのチームを象徴するピッチャーですし、かつムードメーカー。苦しい時期でも変わらず、先輩をいじり、後輩からいじられ、場を盛り上げてくれる。常にピッチャーのキーマンは昇太ですよ」
昇太はたくさん苦しい時期を過ごしているから…
現在はリリーバーだが、先発も経験している三嶋一輝は、今永の貪欲で真摯な姿勢に感化された。