「とにかく皆から好かれている人間で、入団したときから知識や技術をたくさん知りたいという向上心がすごくあって、結果、日本を代表する左腕になりました。昇太はたくさん苦しい時期を過ごしているから、あいつがマウンドで必死に投げている姿を見ると胸を打つものがあるんですよ。エースと呼ばれているにもかかわらず自分から率先して、皆を笑わしてくれる。後輩もきっといい影響を受けているはずですよ」

同じ先発投手として、そしてブルペンからも今永を見守っていた三嶋　©Nanae Suzuki

昇太と組むときは普段とは違ったプレッシャーがある

　同期入団であり、駒澤大学では3つ上の先輩だった戸柱恭孝は、今永のボールを受けられるのは、キャッチャー冥利に尽きるという。

「入団したときから考えに考え抜いて投げているピッチャーですね。自分自身を客観的に見ることができるし、年々技術的にはもちろん投球の幅や修正能力、切り替えも上手くなっていきました。自分が中心となって回っていることを理解しているし、調子が悪くてもゲームを作らなきゃいけないという自覚も強く持っている。抑えて当たり前のピッチャーですし、要求通り流れを作ってくれるので、昇太と組むときは普段とは違ったプレッシャーがあるんですよ」

先輩ながら今永に賛辞を惜しまない戸柱　©Kiichi Matsumoto

　投手としての高い能力はもちろん、考え方や飽くなき向上心、類まれなコミュニケーション能力により先輩後輩問わず慕われていた“投げる哲学者”。その影響を強く受け、継承していこうとしているのが、今季からキャプテンに就任する牧秀悟だ。

牧が今永に聞いた「なぜ野手とコミュニケーション？」

　DeNAを代表してWBCをともに戦った仲であり、日本を熱狂させたあの激闘のあと、二人は次のような会話をしている。

　牧が「今永さんは侍ジャパンのとき、投手だけじゃなくて野手ともすごくコミュニケーションをとっていましたよね？」と尋ねると、今永は次のように答えた。

【次ページ】　結局勝つことが、皆の矢印を同じにさせる