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「なぜ止めないんだ、の声は当たり前だと思う」全日本大学女子駅伝でチームメイトが意識朦朧…それでも大阪芸大の主将が語った「感謝の言葉」 

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荘司結有

荘司結有Yu Shoji

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photograph byL)AFLO、R)Takuya Sugiyama

posted2023/12/29 11:06

「なぜ止めないんだ、の声は当たり前だと思う」全日本大学女子駅伝でチームメイトが意識朦朧…それでも大阪芸大の主将が語った「感謝の言葉」<Number Web> photograph by L)AFLO、R)Takuya Sugiyama

全日本大学女子駅伝ではアクシデントもあり14位となった大阪芸大の主将・北川星瑠(4年)のインタビュー

成長のきっかけは“2年前のあるレース”

 渾身のラストスパートで金メダルを勝ち取った北川。今季は春先からトラックでも活躍を見せ、日本学生個人選手権10000mでは3位入賞。関西インカレでは5000mと10000mの二冠を達成した。成長のきっかけとなったのは2年前、大学2年時の全日本大学女子駅伝だという。

 当時、北川はレース全体の流れを左右する1区を任された。レースは終盤まで10人近い大集団で進み、それぞれが仕掛けどころを探っていた。まだスパートに自信のなかった北川は、そこで仕掛ける勇気を持てなかったことを悔やんだという。

「後半までスローペースだったのですが、最後の1キロで急にペースが上がって、全然ついていけなかったんです。ラストが弱いなと感じて、最後の勝負で勝てる選手になりたいと思いました」

 結果は区間7位。課題を強く感じた北川は中瀬監督とともにスピード強化に乗り出した。指揮官が伝えたのは「ロングスパートで勝負しよう」。10000mなら残り2000mから逃げていく。そんな勝ちパターンを作るための取り組みを強化した。

意識を失い転倒…全日本大学女子駅伝“アクシデントの真相”

「監督と1年半かけてやってきたことが、やっと今年のレースで発揮できるようになり、トラックでも通用するようになった」と北川。名実ともに学生トップ選手へ飛躍した前半シーズンを終え、迎えた10月の全日本大学女子駅伝。チームは8位入賞を掲げ、北川はエース区間の5区に控えていたが、思いもよらぬアクシデントが起きた。

 3区を任された菅崎南花(2年)が、中継所手前で意識を失いながら何度も転倒。最後の気力を振り絞り、23位でなんとかタスキをつなぎ、後に救急車内での救護を受け、意識を取り戻した。北川にタスキが届いた時点で20番手。そこから区間3位の走りで順位を三つ上げ、アンカーの古原夏音(4年)も区間6位と好走し、チームは総合14位でレースを終えた。

 一体何が起きていたのだろうか。中瀬監督に聞くと、レース前の補給食で血糖値が上がり、レース中にインスリンが大量分泌されることにより、急激に血糖値が下がる「インスリンショック」が起きていたという。中継では意識朦朧とした状態で走る彼女の姿が映し出され、『なぜ止めないのか』という声も多く上がった。主催者側とチーム側の連携はどのように取られていたのだろうか。

「レース前には『アクシデントが起きた際、審判が選手を止めても異議申し立てをしない』という内容の誓約書へのサインが求められます。さらに、判断がつかない場合のために緊急連絡先も提出しています。連絡が来たら『止めてください』というつもりで待っていたのですが、なかなか連絡が来ず……。確かに中継所まであの距離だったら判断は難しかったのかもしれません。

 ですので、今回の件を受けて『フラフラして地面に手をついたら失格』『10秒以上蛇行したら止める』といった明確な基準を作ったら、審判の方も止めやすいのではという案を出しました。チームとしてもゼリーやバナナは試合の2時間前までにしようなど、再発防止策を共有しています」

【次ページ】 北川「繋いでくれたことには感謝の気持ちしかない」

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