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「柏原(竜二)が来てるぞ!」箱根駅伝“山の神”に抜かれた男たち「自分の横にふわーっと人が現れました」「走る前から白旗をあげていた」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2023/12/30 17:00
2009年箱根駅伝で東洋大のルーキー柏原竜二(右)と競りあった早大・三輪真之
「キツいとか、しんどいとか、そういう気持ちはなくなっていました。あとで映像を見ると、自分はよだれを垂らしながら走ってるんです(笑)。もう、無我の境地でした」
ところが、平地になってから柏原の背中が再び遠ざかり始めた。
「柏原君は平地も速いんだった。そう思い出していました。最後の交差点を右に曲がり、申し訳ない気持ちでいっぱいでした」
三輪は両手を合わせながらフィニッシュした。柏原がテープを切ってから22秒が経っていた。箱根駅伝100回の歴史のなかで、最もドラマティックな区間と言っても過言ではなかった。
走る前から「白旗」をあげていた
2010年。中央大学3年の大石港与は、2度目の山上りに挑もうとしていた。ほぼ同時にスタートすることになったのは、東洋大の柏原だった。
「招集所での柏原君の様子を覚えています。リラックスしていましたね。走ることを楽しもうとしている様子が伝わってきました。僕は“誰も話しかけるなオーラ”を出すタイプなので(笑)、対照的だったかもしれません。柏原君は前年の走りで『山の神』と呼ばれていたので、ほぼ同時スタートになっても、ついていこうとはまったく考えていなかったです。本音をいえば、走る前から『白旗』をあげている状態でした」
4区は接戦となり、東洋大と中大が競り合い、中継点では大石、柏原が隣り合ってたすきを待つ格好となった。
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