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プロ野球PRESSBACK NUMBER
休部が相次ぐ社会人野球だが…「私、チアリーダーやってみたいです!」企業が野球部を持つ意味はあるか? JRの車掌さんが大声で応援するチーム
text by
鼠入昌史Masashi Soiri
photograph bySankei Shimbun
posted2023/12/24 17:04
今年のドラフト会議。阪神から5位指名を受けたJR西日本の石黒佑弥投手。現役駅員として働いていた
「振りを1週間くらい前に教えてもらって、あとは自分で練習して、ぶっつけ本番です(笑)。20歳くらいの大学生たちと一緒にやるので、ジャマしたら悪いしちょっと恥ずかしいというのもありましたが、貴重な機会になりました。都市対抗の舞台、東京ドームにチアとして立つ経験はなかなかできないので、本当に楽しかったです。入社してから都市対抗を見に行ったこともありますし、たくさんのお客さんの中で……。野球部があって、応援団があって、よかったですね」(熊谷さん)
東京ドームでの応援を終えて近畿統括本部に戻ると、いままではほとんど会話することのなかった同僚から声をかけられる機会も増えたという。
「『踊ってたね』とか『チアやってたんだ、知らなかった』とか。有名になっちゃいました(笑)。同じ会社で働いていても、接点のない人はたくさんいます。こういう機会があると、社内でも知り合いの輪が広がっていって、自分のことも知ってもらえて。そういう意味でも、応援団をやってよかったなと思います」(熊谷さん)
JRの車掌さんが“エール交換”
熊谷さんのチアが応援の花形のひとつだとすれば、もうひとつの見せ場はエール交換だろう。対戦相手の応援団とエール交換を行うシーンは、社会人野球の見どころのひとつにもなっている。エール交換は、応援団の団長の役割だ。JR西日本の応援団でその大役を担っているのは、湯原拓也さん。ふだんは山陽本線など中国エリアの路線で車掌を務めている。
「入社1年目に都市対抗野球を見に行ったんです。そこで、応援の活気や一体感、球場の熱気に感動しました。ぼく自身もスポーツをやってきて、声を出すのが得意だったから、自分も力になれたら、と応援団参加を志願したんです」(湯原さん)
エール交換は、誰もができることではない。応援団に入って、ステージでのパフォーマンスなどを地道に続け、周囲に認められてはじめて務めることができる。湯原さんが初めてエール交換をしたのは、2023年の都市対抗野球。
「応援を頑張ってきた積み重ねがついに認められた、とうれしい気持ちでした。過去の動画を見て、あとは家で練習をして。本番前は緊張しましたが、実際にステージに立つと、自然と声も出てきて緊張しなくなるんです。相手の団長に負けない声量を出せるように、というのは意識しましたね。相手よりも勢いがなかったりすると、選手にもマイナスの影響を与えちゃうんじゃないか、と」(湯原さん)
「車掌って、ひとりぼっちの仕事なんです」
大会後は、熊谷さんと同じように周囲の社員から話しかけられることが増えた。