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「ホンダに比べて体力的に楽」マルク・マルケスがドゥカティ初テストで見せた王者復活の可能性と、日本のファンへの惜別の念
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/12/14 11:01
バレンシアでドゥカティ初テストに臨んだマルケス。初乗りとは思えない貫禄の走りを披露した
契約期間満了を前にチームを去って行くライダーが最終戦後のテストでマシンを乗り換えるのは慣習化されており、ホンダがマルケスのドゥカティでのテストを承諾したことに大きな驚きはない。しかし、サンクスデーの最後にホンダを去るマルケスのセレモニーが行われたのは、マルケスの大きな功績を考えればとても良かったように思う。最終戦バレンシアGPでホンダ離脱の会見を行ったとき、マルケスは「これがホンダとの最後のレースになるとはいいたくない。これからどうなるかは誰にもわからないから」と語っていたが、このセレモニーでもマルケスは同様の言葉でファンにお別れの挨拶をした。
マルケスは2013年にホンダに移籍。MotoGPクラスデビュー初年度に史上最年少記録でPP&初優勝を達成、史上最年少記録でワールドチャンピオンに輝いた。それから19年までの7年間で6回のタイトルを獲得。シーズン最多PPや最多優勝など次々に新記録を樹立し、20年2月には21年から24年までの4年間というモーターサイクルレースでは前例のない長期契約を結んだ。
そのときはマルケスは生涯ホンダで現役を終えることを決断したのかもと思ったのだが、その後はコロナ禍、大怪我、4度の手術、そしてホンダのマシンのパフォーマンス低下など、予想し得なかったことが次々に起こった。
苦難続きの時を乗り越えて
そんな4年間をマルケスはこう語る。
「ホンダと4年契約を結んだことは間違っていなかったし、この4年間で4回のタイトルを獲るのが目標だったんだ。ただ、新型コロナも腕を骨折して4回も手術することも、思いもしないことだった」
マルケスはドゥカティの初テストを終えてすぐに、右腕の腕上がりの手術を行った。腕上がりはデビューしてから初めてのことだったが、それはホンダRC213Vでどれだけブレーキを酷使していたかを物語っている。ホンダ最終年となった2023年のマルケスは、最後の最後まで最高のリザルトを目指した。PP1回を含むフロントロー3回。今年から始まったスプリントでは3位でメダル獲得が3回。雨の日本GPでは3位表彰台を獲得している。これがどれだけ凄いことだったかを、マルケスはドゥカティの初テストで証明したといってもいい。
最高峰クラス7回目、通算9回目のタイトル獲得が、いよいよ現実味を増してきた。