モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
「ホンダに比べて体力的に楽」マルク・マルケスがドゥカティ初テストで見せた王者復活の可能性と、日本のファンへの惜別の念
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/12/14 11:01
バレンシアでドゥカティ初テストに臨んだマルケス。初乗りとは思えない貫禄の走りを披露した
ホンダ時代のマルケスは限界を超えるアグレッシブな走りで転倒が多かった。しかし、ホンダRC213Vのパフォーマンスが高い時代はトライするのは予選まで。決勝レースではほとんど転ばないライダーであり、それが絶対王者として君臨した要因だった。
超一流ライダーはいつの時代でもそうだが、マシンやタイヤが変わってもすぐに順応し、さすがの走りを見せてくれる。マルケスはブリヂストンからミシュランに変わったときも、誰よりも早くタイヤのパフォーマンスを引き出したが、ドゥカティに乗り換えても本当にあっという間にライディングを習得したような印象だった。多くの人から受けた「マルケスはどう? マルケスはチャンピオンになれる?」という質問に対し、僕は「さすがマルケスという感じでした。マルケスは間違いなくドゥカティでチャンピオンになります」と答えた。
マルケスとホンダの契約は年内いっぱいあるためドゥカティに乗り換えたコメントはないが、走行を終えてピットに戻った際テレビのマイクに拾われたコメントが広く伝えられている。それは「ホンダに比べて体力的に楽」というものだが、マルケスより1年早くグレッシーニ・レーシングに移籍した弟のアレックス・マルケスも、ホンダからドゥカティに乗り換えたときに同様のコメントをしている。ドゥカティのデスモセディチGPは、いまMotoGPクラスでもっとも完成されたマシンであり、ライダーにとってもっとも乗りやすいマシンだということを感じさせるエピソードだ。
ホンダとファンへの感謝
テストを終えたマルケスは、休む暇もなく日本へ飛んだ。11年間お世話になったホンダへの挨拶。そして、12月3日にモビリティリゾートもてぎで開催された「ホンダ・レーシングサンクスデー」を訪れ、日本のファンにこれまでのサポートへの感謝を伝えるためだった。これが最後となるホンダのマルケスをひと目見ようと駆けつけたファンからは、「ありがとう」の拍手が送られた。