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胃がん告白の藤井直伸に「俺はもう一回藤井のトス打つで」…31歳で亡くなった名セッターと清水邦広の絆「僕らの前では弱音は一切吐かずに…」 

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清水邦広

清水邦広Kunihiro Shimizu

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posted2023/12/14 11:04

胃がん告白の藤井直伸に「俺はもう一回藤井のトス打つで」…31歳で亡くなった名セッターと清水邦広の絆「僕らの前では弱音は一切吐かずに…」<Number Web> photograph by Getty Images

東京五輪で共闘した清水邦広(1番)と藤井直伸(3番)。2019年の代表合宿で意気投合した2人は“サウナ友”でもあった

 僕と藤井は2枚替えで一緒に出ることが多かったので、信頼関係は抜群でした。藤井のトスはめちゃくちゃ打ちやすいんです。速さがあって、自分が打ちたいポイントにスーッとボールが伸びてくる感じで。高い位置でセットアップして、手首のスナップで持ってきてくれるので、助走に入りやすかったし、ブロックも見やすかったし、本当に打ちやすかった。「いいトス上げるな!」といつも思っていました。

 僕が東京五輪で13年ぶりの得点を決めた時も、トスを上げてくれたのは藤井でした。

 藤井は常に「清水さんに上げますよ」と言ってくれていたし、僕もずっと「絶対に持ってこいよ!」と言っていました。

 僕はサウナが大好きなので、合宿のオフの日に藤井も連れていくうちに、彼もハマっていって。だからオフの日は藤井とサウナに行って、帰りにうまい飯を食って帰るというのがお決まりのルーティーンになり、ずっと一緒に過ごしました。

思い詰めた言葉をかけるよりも、他愛のない会話を

 ずっとふざけあってきた仲だったので、病気がわかってからも、深刻に思い詰めた言葉をかけるというより、「最近なんのYouTube見てんの?」という感じで連絡し、他愛のない会話をしました。心配の言葉はもうみんなにかけてもらって、聞き飽きているだろうと思ったので。

「今、猫の動画を見てるんです」

「猫派やったん? オレ犬派なんやけどなー」

 そんな感じの話ばかり。その間だけでも、少しでもつらいことが和らげばいいな、プラス思考になれればいいなと思って。

 藤井もいつも前向きな感じで連絡をくれて、本当にすごいなと思っていました。落ち込んだ時ももちろんあったと思いますが、そういう時にも奥さんの美弥さんがしっかり支えてくれたから、前向きに治療に専念できたんだと思います。

「奥さんに尻叩かれました」とか、「奥さんが本当に元気に、前向きにしてくれるんで、頑張ります」という話をよくしていました。

 藤井が退院している時期には会いにもいきました。2022-23シーズンの開幕前に会った時には、「だいぶよくなっているんです。脳のがんもかなり小さくなっています」と言っていたので、「これだったらまたサウナにも行けるぞ」なんて話していました。

 2023年の年明けからは体調がよくないということを聞いていて、でもそのたびに藤井は頑張って持ち直していました。でも……。

【次ページ】 「お前がよくなるまで、オレもずっと現役続けるから」

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