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「バットに当たったとき、ゴキッという音が」甲子園決勝でPL学園・清原和博が放った一打…相手4番打者は「清原を間近で見て、これがプロかって」
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2023/12/12 11:02
1985年夏の甲子園決勝で2本目の本塁打を放ったPL学園・清原和博
「最初の打席でぼくの右を抜けるヒットを打たれたんですが、その速さが尋常じゃなかった。バットに当たったときの音も、ゴキッという聞いたことのない音で。だから6回には外角一辺倒で大きいのだけは打たれないようにと警戒していたんですが」
そして9回裏には2死からサヨナラ安打を喫して宇部商は敗れた。
「負けたけど、清原以外にはほとんど打たれた気がしない。ベストは出せたと思います」
決勝は清原の打棒ばかりがクローズアップされるが、藤井をはじめとする宇部商の勢いのある打線を3点で食い止めた桑田の投球もやはり最後を飾るにふさわしいものだった。
“一番風呂”と思って駆け込むと桑田が…
大会のあと、親善試合のために全日本チームが結成された。清原、桑田も、藤井や古谷もメンバーになった。藤井はメンバーの合宿でひそかに誓いを立てた。
「どうせ野球じゃかなわない。それならせめて風呂に入る順番だけでも一番になろう。一番風呂は譲らないぞって考えたんです」
練習が終わり、宿舎に戻る。走りながら服を脱ぐようにして風呂場に駆け込む。だがいつも先に入っている男がいた。桑田だった。
「遅いぞって声をかけられて。一番風呂の競争でもかなわなかったなあ」
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