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青山敏弘「ここが僕のホーム。拍手は宝物」引退・林卓人も感謝、森保一はアジア杯や監督で栄冠…サンフレッチェ広島とビッグアーチの“幸せな31年間”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2023/11/27 11:01
今季ホーム戦終了後の青山敏弘と林卓人。サンフレッチェ広島にとって「ビッグアーチ」はずっと幸せで大事な関係だった
「今の自分は試合に出るようなレベルにないんで……」
20年のプロ生活で酷使してきた体はボロボロで、全盛期のプレーからほど遠いことは、青山自身がよく分かっていた。それを素直に認めたうえで、「もう1回、自分のパスでファン・サポーターに喜んでもらいたいし、自分も喜びたいし、チームを勝たせたい」と自身の体と向き合い、基本技術を一から見直し、誰よりも居残り練習に励んできた。
そんな青山の姿を、指揮官は見逃していなかった。
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「監督が『アオは試合に出るに相応しいプレーをしている』とはっきり言ってくれて、すごく嬉しかったし、それ以上に、その期待に応えないといけないという責任を感じました。自分がどれだけやれるのか不安もあったけど、監督が『アオならできる』と言ってくれたんでね、その言葉を信じてピッチに立ちました」
先制ゴール満田の“寿人から継承”セレブレーション
ゲームは序盤からサンフレッチェが制圧した。9分、アカデミー出身で、今夏セレッソ大阪から帰還した加藤陸次樹のクロスに、同じくアカデミー育ちの満田誠が頭で合わせて先制する。
メインスタンド左側のコーナーに駆け寄った満田は、フラッグを掴んで胸を叩くお馴染みのポーズを披露した。憧れの存在である佐藤寿人から背番号とともに受け継いだゴールセレブレーションだ。
「エディオンスタジアムで唯一掴んでなかったフラッグがあそこだったので、塗り替えておこうと思って」
11分にはアカデミー出身の東俊希のクロスに、大卒ルーキーの中野就斗が頭で合わせ、早くも2点をリード。ゲームを優位に進めていく。
エディオンスタジアム広島の最後を勝利で飾りたい――。それは誰もが抱いていた思いだが、立ち上がりからラッシュをかけて、点差を広げなければならない理由もあった。
指揮官の粋な計らいにより、現役引退を表明したばかりのベテランGK林卓人が、今季初めてベンチ入りを果たしていたのだ。
アカデミー育ちのGK大迫敬介が「試合前から、スコアが開いて卓人さんが出る形になればいいなと思っていた」と明かせば、青山も「ホテルにいるときから卓人さんの隣にいさせてもらった。今日は卓人さんに試合に出てもらいたいっていう、みんなの思いが詰まったゲームだった」と力を込めた。
青山「温かい拍手をいただき、僕の宝物になった」
その青山も3月8日のルヴァンカップ・横浜FC戦以来、実に8カ月半ぶりの公式戦スタメンとは思えないほど安定したパフォーマンスで配球し、チームは2-0でゲームを折り返す。