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青山敏弘「ここが僕のホーム。拍手は宝物」引退・林卓人も感謝、森保一はアジア杯や監督で栄冠…サンフレッチェ広島とビッグアーチの“幸せな31年間”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2023/11/27 11:01
今季ホーム戦終了後の青山敏弘と林卓人。サンフレッチェ広島にとって「ビッグアーチ」はずっと幸せで大事な関係だった
ハーフタイム、横内監督は「サンフレ、すごく強いね。ガンバを圧倒していますね」と興奮を隠せなかった。横内監督が広島ビッグアーチを訪れることができたのは、磐田をJ2で2位に導き、J1昇格を決めたから。もし3位以下でJ1昇格プレーオフに回っていたら、それどころではなかった。愛着のあるスタジアムの最後に立ち会えたうえ、来季は新スタジアムで古巣と対戦できる――横内監督にとっても感慨深いものがあるだろう。
後半に入っても攻撃の手を緩めないサンフレッチェは53分、相手のクリアを青山が体を投げ出してカットすると、満田、川村拓夢、加藤とアカデミー育ちの3人がボールを繋いで3点目を奪い取る。誰もが待ち望む舞台が整いつつあった。
73分には万雷の拍手が注がれるなか、青山がベンチに下がり、39歳の柴崎晃誠が登場した。スキッベ監督と抱擁を交わした青山は、「大声援のなかで交代するのが今日の目標でした。本当に温かい拍手をいただき、僕の宝物になった」と感謝した。
GK大迫と代わって41歳の林が入るとチャントが…
そして83分、待望の瞬間が訪れる。
満田に代わって36歳の柏好文がピッチに入り、タッチライン際でGK大迫と抱き合った41歳の林がサポーターの陣取るホーム側のゴールに向かう。すかさず林のチャントが鳴り響いた。
決して長くない出場時間で、林は相手FKからのヘディングをがっちりキャッチするなど落ち着いたプレーでゲームを締める。チームも最後まで集中力を切らせることがなかった。
スコアは3-0、シュート数は27対3の圧勝で、3位の浦和レッズが敗れたため、サンフレッチェが3位に浮上するというオマケ付きだった。
風間、高木、久保らのファインゴール映像も
試合後のセレモニーで林はまず「試合に出られる展開にしてくれたチームメイトに……ブラボー!」と感謝を伝えたが、まさにその言葉に尽きる。
こうした記念試合では、強い思いが力みに繋がりかねないが、満田や大迫、川村、東ら20代前半の選手たちが中心となり、ハツラツとしたプレーを見せたサンフレッチェに、来季以降の可能性を感じずにはいられなかった。
スタジアムの大型ビジョンには、思い出を振り返る映像が映し出されていた。