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「なんで私だけ?」石井優希が苦しんだ“中田久美の秘蔵っ子”としての重圧…涙する毎日を救った木村沙織のLINE「わがままになっていいんだ、と」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT
posted2023/11/26 11:01
リオ五輪を終えた後、新体制となった日本代表では苦悩の時間もあった石井優希(写真/2018年世界バレー)
それによって肩の力が抜けていったのかもしれない。「現役でいる限りはスタートで出たい」というこだわりが徐々に変化し、「途中出場でも、どんな役割にでも徹しよう」という考えになっていった。実際に2018年の世界選手権などでは、途中から入って流れを変えるスーパーサブとして欠かせない存在となった。
2021年の代表合宿が始まった時、その年の東京五輪を代表での集大成にしようと考えていた石井は、中田に「スタートでも控えでも、どんな役割でもチームに貢献したい。自分が必要とされるならどんな役割にでも徹します」と伝えた。その頃には腹を割って話し合える関係になっており、中田の相談相手にもなった。当時は指揮官の孤独を感じ取っていた。
「理沙さんも名奈さんも(引退して)抜けて、その頃には久光で一緒にやっていたのが私だけになっていたし、年齢的にも結構上のほうになっていたので信頼してもらっていたのかなと思います。2021年は久美さんと直接お話しする機会が多くて、遠征中にホテルの部屋に呼ばれたりもしました。やっぱり監督なのですごくプレッシャーがあったと思いますし、弱音を吐けない部分もあったと思うので、自分が、はけ口じゃないですけど、そういった役割もあったのかなと思います」
石井が集大成として臨んだ東京五輪は、しかし1勝4敗で予選ラウンド敗退となった。
「チームが、あまりいい雰囲気ではなかったですね。それぞれがなんとかしようという思いはもちろんありましたけど、空回りしているような。正直、選手とスタッフが一体となっていたとは言えないし、トータルで一つになりきれていなかったことが、ああいう結果につながったんじゃないかなと感じます」
初戦でエースの古賀紗理那(NECレッドロケッツ)が怪我を負って離脱したことでチームが揺らいだ面はあったが、石井は、大会前から不安を抱いていたという。その不安とは――。
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インタビュー最終回では、失意の東京五輪のあとに湧き出た思いと、「引退」「結婚」について明かしている。
(第3回へ続く)