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侍ジャパン、韓国にサヨナラ勝ちでアジア連覇! 井端弘和監督が仕掛けた2つの決断…送りバント“封印”を解き、佐藤輝明の打順を変えた本当の狙い
posted2023/11/20 17:21
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Getty Images
死闘は延長10回無死一、二塁から始まるタイブレークでの決着となった。表の攻撃でまず韓国が1点を勝ち越す。そして1点を追いかけるその裏の日本の攻撃だ。
井端弘和監督が動く。
先頭の森下翔太外野手(阪神)に代えて、“ピンチバンター”として代打の古賀悠斗捕手(西武)を送る。
「試合前から監督からは“そういう状況になったらあるから”と言われていたので、準備はしていました」
8回ぐらいから、この場面だけを想定して準備を進めてきたという古賀が、期待通りに送りバントを一発で決めて1死二、三塁となる。4番の牧秀悟内野手(DeNA)が申告敬遠で歩いて満塁として、5番の坂倉将吾捕手(広島)がセンターに同点犠飛を打ち上げる。続く万波中生外野手(日本ハム)が再び、申告敬遠で塁が埋まったところで、井端監督がゆっくりとベンチを出てきた。
向かった先はネクストバッターズサークルにいる門脇誠内野手(巨人)の元だった。
「いつも通りで、思い切って行ってこい!」
監督の最後のアドバイスが、アジア連覇への号砲でもあった。
「前の打席で強引になっていたので、井端監督から言われて、初心に返ることができました」
これで門脇の心も落ち着く。初球のスプリットをしっかり見切った2球目だ。これもスプリット。しかしやや高めに抜けてきたのを逃さずに逆方向に打ち返した。鋭い打球が三遊間を破って三塁走者の小園海斗内野手(広島)が歓喜のホームを駆け抜けた。
若き侍ジャパンのアジア連覇の瞬間である。
決断は戦う前から始まっていた。
「今日はしっかり送るところでは送りますよ」
試合前にこう語ったのは井端監督だった。
勝利のための決断ー打線の組み替え
選手に国際大会の経験を積ませて、個々の力を発揮させる。そのために大会に入ってからは送りバントを封印してきた。