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W杯惨敗「自分たちのサッカー」から約10年…「シン・自分たち」の日本代表“2つのキーワード”を遠藤航や三笘薫、堂安律の言葉から探る
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/11/20 17:02
ドイツなど強豪国からアジアレベルまで。W杯までに多種多様な相手と戦う日本代表に求められるものとは?堂安律らの言葉から考える
★2014年:「ボールを支配して相手の守備を崩す」という〈スタイル〉へのフォーカス★
2010年W杯をポゼッションサッカーで制したスペイン代表のような〈スタイル〉こそが攻撃的だと定義して、そこに向かっていった。今になってみれば――当時はまだ、それを実行するだけの個人・グループ・チームの戦術レベルにはなかった。さらに世界的に見ても、攻守のトランジションの高速化にトレンドが変遷していたと冷静に振り返ることができる。
ただ、このチームには周囲の人を巻き込む力がある本田がいた。そのメッセージ性の強さから、多くの人がその点を見逃していた。
16強のロシア、カタールW杯でフォーカスしたものは?
★2018年:勇気を持ってアクションを起こしていく〈マインド〉で世界と戦うことにフォーカス★
2015年に就任したヴァイド・ハリルホジッチ監督は日本サッカーに多くの学びを与えた。しかし、そのチームマネージメント力は壊滅的で、最終的にはチームの大半が拒否反応を示し、大会直前にその座を追われた。ハリルホジッチ監督にノーを突き付けた選手たちは、その行為と引き替えに日本代表のユニフォームを背負うことに意義や責任を自覚した。
そして、本大会前の限られた時間のなかで、キャプテンの長谷部誠を中心に、戦術面の整備を進める過程で、日本代表とはどうあるべきかについても突き詰めていった。
最後は時間稼ぎのためにボールを回すだけだったポーランド戦翌日のミーティングで主力選手が涙を流したのも、2−2で迎えたベルギー戦の後半アディショナルタイムのCKで選手がリスクを背負った代償としてカウンターを受けて失点したのも、勇気を持って自分たちからアクションを起こしていく〈マインド〉がチームにしっかり刻まれていたからだろう。
★2022年:〈勝利〉にフォーカス★
一時は、若手選手から警鐘が鳴らされるばかりか、日本国内にあきらめムードすら漂っていた。ただ、ドイツとスペインという、W杯優勝経験国(世界に8カ国しかない)と同居したことで、劣勢を強いられるのを前提にした上で、いかに〈勝利〉を目指すかにフォーカスできたことがグループリーグ突破の主要因となった。
「2010年の時に似ているのでは?」と問われた堂安は…
こう振り返ると現在の状況は10年ほど前、2010年南アフリカW杯後の状況に似て見えるのかもしれない。ただ、多くの選手は冷静かつ、“大人”になっている。実際、カタールW杯最後の試合となったクロアチア戦を終えた直後に、当時滞在していたホテルで、求めるべき「理想」について選手たちは語り合っていたのだから。
クロアチア戦翌日、同大会で2ゴールを挙げた堂安律に「この状況は2010年のときと似ているのではないですか?」と問うと、彼はこう答えていた。