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ドラフトウラ話…「巨人の本当のサプライズは…」盟主のプライドを見た《4連続社会人指名》ドラフト全指名を検証する《西武・巨人・楽天編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/11/09 11:01
巨人1位指名の西舘勇陽投手(中央大・185cm79kg・右投右打)
巨人のサプライズは「4連続社会人指名」
【巨人 ドラフト指名選手】
1位 西舘勇陽 22歳 投手 中央大 185cm79kg 右投右打
2位 森田駿哉 27歳 投手 ホンダ鈴鹿 185cm88kg 左投左打
3位 佐々木俊輔 24歳 外野手 日立製作所 174cm80kg 右投左打
4位 泉口友汰 24歳 内野手 NTT西日本 178cm80kg 右投左打
5位 又木鉄平 24歳 投手 日本生命 182cm92kg 左投左打
【巨人 総評】
実は、今年の巨人ドラフトで最大のサプライズが起こる。
中央大・西舘勇陽1位入札判明の瞬間まで、そう信じていた。
巨人、進藤勇也(上武大)1位指名!
ご存じ阿部慎之助捕手が監督就任。ならば「捕手」を整備、強化しないわけがない。そこにうってつけの逸材・進藤勇也捕手。
しかし、巨人は投手にいった。阿部慎之助新監督は、大城卓三捕手を一丁前にしようとしていることが、これでわかった。
あとで悔やまなければよいが……。「進藤勇也」は、向こう3年から5年は、アマチュアから出てこない。
とはいえ、抽選で日本ハムを退けて獲得した1位・西舘勇陽投手(中央大)だって、立派なものだ。
阿部新監督の直系の後輩。共に清水達也監督の指導を受けたのだから、「弟弟子」というところか。スライダー、カット、フォーク……タテ系の変化球の激しい動きとコントロールが素晴らしい。当たり前みたいに150キロも投げるから、速球投手に見られるが、本質はこっちのほうだ。大学4年間の本人の努力と、導いた者の骨折りの賜物に違いない。
そして、巨人ドラフトの本当のサプライズは、ここからだった。
連続4人、社会人野球から指名、そのまま「支配下」を終えたから驚いた。2年連続Bクラス、リーグ優勝からも3年間遠ざかっている巨人。「王者」のプライドにかけて、来季は何が何でも「V」。その覚悟と宣言を具現化した今回のドラフト指名だろう。
なにかと形を整えてきたチームが、なりふり構わず指名してきた社会人野球の4選手。それだけでキッパリ、支配下ドラフトをきり上げた。
2位・森田駿哉(投手・ホンダ鈴鹿)は、現時点の力量でいえば、今回のドラフトで指名された左腕の中でNo.1だ。今の実力なら、3球団が重複した武内夏暉(國學院大)以上と見ている。
長身から投げ下ろす速球は、コンスタントに145キロ前後をマークし、カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォーク……持ち球のすべてでカウントがとれて、特にツーシームは左打者の内角を突ける。この1年、都市対抗など大きな大会でも存分に実力を発揮。多くが不安視していた「満27歳」も、実戦の奮投を見るかぎり、体もピッチングも、フレッシュで若々しい。