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「ビーチバレーは個性を発揮できる競技」 東京五輪代表・村上めぐみが考える競技の未来「小柄でも、バレーでトップだった経験がなくても」
text by
吉田亜衣Ai Yoshida
photograph byL)Getty Images、R)Asami Enomoto
posted2023/11/05 11:02
日本代表として東京五輪に出場し、現在は選手会長を務めるビーチバレー選手の村上めぐみ
「プロとアマが混在」ビーチバレー界の現状
「パートナーといっても『対人間』。ただ意見を言い合ったり、我慢したりするのではなく、大切なのは目標を達成するためにパートナーと向き合い、解決に向けて話し合って実行していくことだと学びました。自分がやってきたことは、今の後輩たちにもきっと役に立つと思ったので、昨年から選手会長という役職も引き受けました。選手会では、自分の意見やアイデアを出せる場を設け、プロやアマチュア、立場の違う選手同士がお互いを理解し合い、コミュニケーションを図っていけるような組織づくりを目指しています」
現在のビーチバレーボール界は、プロとアマチュアが混在している。プロ選手は所属先の社員やスポンサーからの契約金を資本に活動。アマチュア選手は仕事の前後に練習し週末の試合に出場する。各選手に用意されている環境や求められている条件はそれぞれ。環境の厳しさと甘さ、双方の性質が交錯しているそんな競技環境にも、村上は課題があると話す。
「プロとアマチュアの境目がないですし、競技力向上のために、自主的に考えて行動する選手は、決して多いとは言えないと思います。だから、自分のような立場の人間が、この世界がよい方向に向かうため、選手たち自身が考えて行動できるように言い続けるしかないです。ユニフォームの問題もそのひとつ。タンクトップを作ったのも、妥協してタンクトップを選択するのではなく、競技向けのタンクトップを作って自らの意志で選んでもらう空気になっていけばいいなと思ったからです」
ユニフォームでも個性を出していい
ユニフォームが自由化されることをきっかけに、競技に取り組む選手たちや選手の肖像を守るべき競技団体も、考えるべきことが増えるだろう。現時点では未成熟でも、今後大きな成長を遂げていく可能性は秘めている。村上はその流れに期待する。
「ビーチバレーボールは、開放的なシチュエーションなので選手の個性を発揮できる競技。腹筋を見せたい人は見せて、出したくないならワンピースタイプを着ていいと思う。おしゃれな感じでいきたいのであれば、背中が開いている水着やタンクトップも目立ちますね。選手は自分自身をデザインしてマネジメントすることで、スポンサー獲得にもつなげていける。世の中、たくさんスポーツ競技が存在する中で、ビーチバレーボールも競技としての個性を出して進んでいきたいですね」
すべては次世代のために――。「いまの私ができることに取り組んで後輩たちにバトンを渡したい」。村上は、ビーチバレーボールの発展につながるヒントを探し続けている。
《インタビュー第1回、第2回では、ビーチバレー選手を脅かす盗撮被害の実態や、変わりつつある水着ユニフォームの現在などについて伺っています》