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「最後、誰にトスを?」セッター関田誠大に聞きたかった“幻の1本”…男子バレー“まるでドラマ”な伏線回収「司令塔の胸に刻まれた遊び心」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byFIVB
posted2023/10/12 17:02
パリ五輪の出場権を獲得し、カメラにポーズを向けるセッター関田誠大とミドルブロッカーの山内晶大、高橋健太郎、小野寺太志
「クイック行こうかなーと思ってました。まあセオリーは祐希のパイプだったと思うんですけど」
その時コートにいた前衛のミドルブロッカーは、同い年の山内だった。
山内も試合後、関田とその話をして、「クイック上げようと思ってた」と聞いた。だがそれ以前に、あの場面でサインを出した関田の、かすかにいたずら心が漂う表情を見て、上がってくる予感がしていたという。
「S6(セッターが後衛センター)のローテだったんですけど、通常のAクイックよりさらにセッターに近いところで打つ“ヘッド”というサインを出してきたんです。そのローテではヘッドの助走に入りにくいんですけど、でも結構使うんですよ彼。
あの時も、『俺ここのヘッドあんま好きじゃねーなー。入りづらいなー』と思ったんですけど、彼の顔を見て『わ、絶対これ、上げてくるわこいつ』と思った(笑)。表情とかしぐさとか、雰囲気で。嬉しかったですけどね。彼とはずっと長くやってきているので、彼のトスで決めたい、得点したいというのはありますから」
関田に、なぜセオリー通りではなくクイックだったのか? と聞くと、こう答えた。
「僕の“遊び心”じゃないすか(笑)。そこを取り戻せたのはよかったと思います。自分が持つべきところだと思うので」
願わくば見たかった。オリンピック行きを決める2人のコンビを。
だが山内が唱え続けた“遊び心”は、しっかりと司令塔の胸に染み込んでいた。