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「最後、誰にトスを?」セッター関田誠大に聞きたかった“幻の1本”…男子バレー“まるでドラマ”な伏線回収「司令塔の胸に刻まれた遊び心」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byFIVB
posted2023/10/12 17:02
パリ五輪の出場権を獲得し、カメラにポーズを向けるセッター関田誠大とミドルブロッカーの山内晶大、高橋健太郎、小野寺太志
チュニジア戦は小野寺太志(サントリーサンバーズ)のBクイックからスタート。試合を通して積極的に真ん中を使いリズムよく攻撃を展開し、セットカウント3-0で快勝。試合後は安堵の表情だった。
「まず自分らしさを出していこうと思って、積極的にクイックを使いました。勝ちにこだわりすぎて自分のよさが出ないより、まず自分のよさを出していこうと思って」
亡き藤井さんの特集に触れて
エジプト戦の夜にもう一つ、関田に前を向かせたできごとがあった。1人で部屋にいた時、高橋健太郎から「テレビ観て!」と電話があった。テレビをつけると、東京五輪を共に戦い、今年3月にがんのためこの世を去った藤井直伸の特集が放送されていた。
「藤井さんの特集を見て、それが一つきっかけで、ちょっと救われたというか。また頑張らないとなという気持ちになれた。正直、『藤井さんのために』と頑張れる器ではないと僕は思っているんですが、藤井さんが立ちたかった場所だと思う。そこでせっかくやるなら、楽しくやったり、思い切りやったほうが、藤井さんも見てくれていると思うので、そういうふうに考えて」
第6戦でスロベニアにセットカウント3-0で勝利し、五輪出場権を獲得した試合後は、藤井の背番号「3」のユニフォームを着て、声を詰まらせながらコートインタビューに答えた。
最終戦となったアメリカ戦を終えた後、改めて、関田にとって藤井はどんな存在だったのかと尋ねると、間髪入れずに言った。
「ライバルでした」
まっすぐな眼差しで、こう続けた。