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嘔吐、気絶寸前、脱水症状、熱中症…フェルスタッペン3連覇のカタールGPで地獄絵図が繰り広げられたわけ
posted2023/10/13 11:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images / Red Bull Content Pool
カタールGPの決勝レースは、まるで地獄だった。
ポール・トゥ・ウィンのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、ウイニングランを終えて、表彰台の下に帰ってくると、マシンを降りてチームスタッフと勝利の喜びを分かち合った後、珍しく自分のマシンの前でしゃがみ込んだ。
フェルスタッペンは前日のスプリントでドライバーズ選手権3連覇を決めていた。今季の王者として臨んだ決勝レースを快勝したにもかかわらず、喜びを爆発させることもなく、トレーナーから受け取った2本のドリンクボトルを飲み干した。
「間違いなく、僕のレース人生でトップ5に入る厳しいレースだった」
そのフェルスタッペンと優勝争いを演じたオスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、表彰式へ向かう前の控え室で、テレビカメラがあることを知りつつも、床に横になって疲弊した体を休めていた。
「僕の人生で最もハードなレースだった」
彼らが表彰式を行なっている裏で、4位以下のドライバーたちが集まるパルクフェルメは、目を覆うような光景となっていた。アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)はマシンを降りた後、メディアが待つミックスゾーンへ向かわず、メディカルセンターへ運ばれていった。急性熱中症の治療を受けるためだった。
過酷なコクピット
アルボンのチームメートのローガン・サージェントは、レース中、重度の脱水症状を起こし、レースをリタイアしていた。
7位でフィニッシュしてミックスゾーンへやってきたエステバン・オコン(アルピーヌ)は、スタート直後に嘔吐していたという。
「15周目ぐらいに気分が悪くなって、コックピットの中で2周ほど吐き続けたよ。それでヘルメットに空気を入れようとしたけど、熱風が入ってきて逆に熱がこもった。正直、地獄だった」