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藤井聡太に勝利後、「自分でも驚いている」発言で話題に…広瀬章人が明かす快進撃の要因「息子が保育園に行くようになって…」
posted2023/10/15 06:01
text by
大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
Hirofumi Kamaya
自分の棋士人生で最も注目された瞬間です
近年の将棋界で最も期待される記録といえば、羽生善治のタイトル獲得通算100期だろう。羽生がそれに目前まで迫ったのが、防衛すれば記録達成だった2018年の第31期竜王戦七番勝負だ。第5局を終えて3勝2敗としながら、痛恨の連敗。現在まで99期で留まったままだ。
そのとき大記録を阻んだのが、広瀬章人である。早稲田大学在学中の23歳で初タイトルの王位を獲得。卓越した終盤力を武器にして、トップ棋士の道を歩んできた。
「自分の棋士人生で最も注目された瞬間です。今後もあれ以上はないでしょう。羽生さんに勝てたことは誇りです」
自分は空気を読めないみたいですね。ハハハ
藤井聡太ファンを大いに落胆させたのも広瀬だった。2019年11月、藤井は第69期王将戦挑戦者決定戦に進出し、タイトル戦出場に初めて王手をかけていた。終盤は必勝の展開だったが、広瀬の勝負術に屈してまさかの逆転負け。翌年、藤井は二冠に輝き、タイトル獲得最年少記録を際どく更新したが、危うく広瀬のために叶わなくなるところだった。広瀬はいたずらっぽい表情でこう語る。
「自分は空気を読めないみたいですね。ハハハ」
その広瀬は2020年末に大勝負を戦っていた。第46期棋王戦挑戦者決定戦に臨むも、糸谷哲郎に敗北。2019年度は2回タイトル戦に出場したが、2020年度はゼロ。もどかしさを感じているだろうと思ったが……。
勝敗で一喜一憂することはほとんどありません
「途中は形勢がよかったと思うんですけど、感想戦で糸谷さんに否定されたんです。でも家に帰ってから調べたらやっぱり自分がよかったので、ホッとしました。だから悔しさはそれほどなかったです。その形勢判断も間違っていたら、ガッカリしたでしょうけどね」
結果より内容を重視しているのだ。