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「男子バレーはいいが、女子は厳しい」逆境に燃えた主将・古賀紗理那はチームをどう変えた? 五輪切符は持ち越しも「今は一緒に呼吸ができている」
posted2023/09/25 17:18
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Yuki Suenaga
2時間19分に及んだフルセットの攻防が決着したのは21時44分。ボールが日本コートに落ち、15点目を得たブラジルの選手たちがコートになだれ込み、歓喜の輪をつくる。
その瞬間、古賀紗理那はコートにいなかった。
4セット目から井上愛里沙と代わり、ベンチへ。最前列で声を出し、タイムアウトのたびに円陣の中央に立つ。コートに立って得点をもぎ取るだけでなく、今ここでできるすべてを果たす。しかし、最後まで戦い続けたが、勝利にはあと一歩及ばなかった。
体育館を埋め尽くした1万213名の観衆に向け、深々と頭を下げた。今シーズン最大のターゲットに掲げてきた「五輪予選」で出場権獲得を逃したことで悔しさが込み上げる。それでも、さまざまな感情を噛みしめながら古賀は言った。
「チーム、個人にとっても、悔しい結果ですが、課題の中にも希望があった。プラスの要素もたくさん出た大会でした」
躍進する男子バレーの一方で…
男女ともに日本はホームでの開催となった五輪予選は、どちらも8チーム中2枠という狭き枠を取り合う過酷で熾烈な戦いだ。ネーションズリーグ(以下、VNL)で銅メダルを獲得した男子日本代表への期待が高まる一方で、正直、女子への期待値は高かったとは言い難い。
その理由は明確だ。今年度の代表シーズンが始まり、合宿を重ねて迎えたVNL(5月30日〜)では攻撃がかみ合わなかった。事実、試合後や合宿先での取材時に古賀が口にするのも不安と不満のほうが多かった。
「やらなきゃ、やらなきゃと焦ってバタバタする。そうなると、パスもトスも全部急いでぴゅんぴゅん飛ばすだけなので、結果、どの攻撃も活きないんです。余計にセッターも迷ってしまうし、どこに来るかわからないからスパイカーは助走にも入れない。コート内に全く余裕がなかったし、自分たちでやっていても面白い、楽しいとは思えませんでした」
五輪出場が懸かる大一番に向けて、限られた時間はあっという間に過ぎていく。しかも耳に入るのは「男子はいいけど、女子は厳しい」という声ばかり。いわば逆境。だからこそ、古賀は燃えていた。
「うまくいかないことだらけですけど、絶対やってやります。オリンピック、絶対行きたいので」