7位指名の高寺望夢内野手（上田西高）は、甲子園大会が中止になり、プロ野球志望の高校球児を対象とした「練習会」が行われた東京ドームで火の出るような痛烈センターと軽快なフットワークを披露。それが決め手になったと聞いている。いまもファームの成長株として、現場の評判が良いとも聞いている。

　そして、ここで「選択終了」としなかったのが「2020阪神ドラフト」のハイライトだった。8位で石井大智投手（四国IL・高知）を指名したのだ。

　150キロ超の強烈快速球と魔球的シンカーで今季42試合投げて18ホールド、防御率1.18（9月20日現在）。盤石の安定投球で、中継ぎの一角を全うした右腕である。

独立リーグ出身の石井は今季、中継ぎとして40試合以上に登板してチームを支えた　©︎JIJI PRESS

　独立リーグの投手である。ならば（失礼ながら）育成ドラフトでもよかったはずだ。なぜ、わざわざ支配下ドラフトのいちばん最後で指名したのか？ その理由は誰にも訊いたことはない。しかし「状況証拠」だけでもその理由はわかる。

「育成では獲れない」と判断したからだ。育成ドラフトで真っ先に「石井大智」を指名しようとしている球団がいくつもある。そんな情報を、事前に阪神がつかんでいたとしたら――。最速153キロ、アベレージでも140キロ後半をコンスタントに投げて奪三振の山を築き、ドラフト前の調査書はほぼ全球団から届いていたと聞いている。

　ヨソに獲られてしまうのは、あまりにも惜しいポテンシャルの持ち主。ならば、「最後の1人」として、支配下で獲得しておこう……そうなるだけの潜在能力を持っていたことは、今季の快投を見ていれば、誰の目にも明らかであろう。

ドラフトは何年後かの「答え合わせ」が面白い？

　ドラフトとは「結果論」である。

　何年か経ってからの「答え合わせ」こそ、興味深い。

今季のドラフトは数年後、どんなドラマを生むのだろうか？（※写真は昨年度）　©︎JIJI PRESS

　転じて今年、2023年ドラフト。大学生投手は史上最高とも思えるほどの人材豊富なドラフトだ。そのポテンシャルを見極めた球団と、見間違えた球団……数年後、その差は20勝、30勝の成績差になって、ペナントレースの結果に跳ね返ってくる。

　3年後なのか、5年後なのか。いやいや、1年目からもう明確な勝ち星の差になって表れてくるかもしれない。プロ野球の近未来を決定づけそうな「2023ドラフト」まで、あともう1カ月である。