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「カマダの悪口言うとかアホ」「すげえゴール」ラツィオ同僚とファン絶頂+イタリア紙1面…“日本人が知らない鎌田大地評”を在住記者は見た
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byNurPhoto/Getty Images
posted2023/09/04 17:00
昨季セリエA王者ナポリ相手に決勝ゴール。初得点とラツィオ今季初勝利によって鎌田大地が得た信頼は特大だ
52分、ドリブルで右サイドを破ったF・アンデルソンが低空クロスを放った。ボールの軌道と走り込む鎌田を見た“魔術師”L・アルベルトは、スクリーンとなり相手DFを引き付けてスルーする。ボールを受けた鎌田はドリブルで左方向へ切り込みながら、左足で完璧なディアゴナーレ(対角線)ショットをゴール右隅に突き刺した。
鎌田はボールの行方を見届けると即座に立ち上がり、両腕で小さくガッツポーズをした。一番近くにいた主将インモービレを皮切りに仲間たちが次々に鎌田へ駆け寄り、初ゴールを祝福するハグを重ねた。
主将インモービレ、魔術師L・アルベルトも絶賛
FWインモービレは試合後、率直な感想を漏らした。
「正直(鎌田が)あの体勢から決められるとは思っていなかった。試合後にコーチと話をしたら、『いけるいける。カマダはこういう得点もできる選手だ』と説明を受けて、あらためて映像で見直した。すごいゴールだった」
MOM表彰を受けたL・アルベルトも「鎌田のゴール、すごかったね! 彼が決めたシュートの方が僕のよりかなり難しい」と試合後に語った。
インモービレをはじめ、周囲はまだ鎌田のプレースタイルや特徴を完全には理解していない。つまり、選手同士の相互理解やオートマティズム構築が進めば、ラツィオは今後飛躍的に強くなる可能性を秘めている。
鎌田は65分でベンチに退いたが、チームの士気は高いままだった。交代出場した新入団MFゲンドゥージとFWザッカーニのゴールが2本とも取り消されても集中力を切らさず。終盤、攻撃に逸るナポリを、ラツィオは最前線の3トップから連動プレスで抑え込み、守りきった。
ただの白星ではない。
昨シーズン、勝ち点16差をつけられた王者を敵の本拠地「ディエゴ・アルマンド・マラドーナ」で破ったのだ。連覇を狙う優勝候補ナポリに土をつけた選手たちが得た自信は大きい。
今夏の移籍市場で「日本人選手を獲得する」と高らかに宣言したものの、結局叶わず終いだったナポリのデラウレンティース会長は、鎌田のゴールに苦虫を噛み潰したのではないか。
鎌田本人は、今年3月、CL決勝トーナメント1回戦2ndレグでナポリから喫した0-3惨敗を思い出していたかもしれない。因縁の相手から奪った初ゴールとセリエA初勝利は見事な意趣返しだった。
サッリ親分「鎌田とならチーム全体の…」
ラツィオは昨シーズンより強くなっているか。試合後の会見で問われたサッリ親分は、鎌田を引き合いに出して答えた。