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井上尚弥“次の相手”マーロン・タパレスは「見えないパンチを持っている」…タパレスを撃破した男・岩佐亮佑に聞いた、井上vs.タパレス勝敗予想
posted2023/08/12 17:03
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Takuya Sugiyama(L)/AFP=JIJI PRESS(R)
井上が標的とする31歳の2団体統一王者とは、どのようなボクサーなのか。待ち望まれる4団体統一戦の展開予想はいかに――。リングで拳を交えた者しか分からないことがある。かつてそのタパレスに11回TKO勝ちを収め、同級の世界王座を獲得した岩佐亮佑に話を聞いた。
いつも後出しジャンケンしてくる感じ
舞台は本場アメリカのニューヨーク。2019年12月7日、IBF世界スーパーバンタム級の暫定王座を懸けて戦ったタパレス戦は、プロキャリア33戦の中でもベストバウトに挙げる。元IBF世界スーパーバンタム級王者の岩佐は今年6月、33歳で現役引退を正式に表明し、現在は運送業などの事業を始めているが、今でもその時のことを鮮明に覚えているという。「当時と今のタパレスは少し違う」と前置きした上で、リングで向き合った狡猾なフィリピン人の戦いぶりを振り返ってくれた。
「基本的に引いて待つタイプで、距離の取り方、空間支配がうまい。常にカウンターを狙っていたと思います。例えるなら、いつも後出しジャンケンしてくる感じ。先に僕が手を出してから、それに合わせて違うパンチを出してくる。それでいて、前に出てくるときはパワーがあるし、独特のタイミングで打ってくるんです」
見えにくい角度からいきなり飛んで来る
手を焼いたのは、見えない前の手。サウスポー同士の戦いとなり、右ジャブの差し合いでは岩佐が優位に立っていたものの、想定を超えるパンチがあったという。事前に映像で予習していたよりもリングで見るそれは違った。身長172センチの岩佐に対し、タパレスは163センチ。リーチ差は16センチもあったにも関わらず、距離を一瞬で縮める飛び道具は予想以上だった。
「タパレスの右フックは、見えにくい角度からいきなり飛んで来るんです。しかも、思った以上に伸びてくる。ジャブの距離よりも長いフックが飛んできますから」
嫌な空気感を持っている
映像のイメージと違ったのは、右フックだけではない。後ろ重心で腰を落として、低い体勢で構える戦い方にもやりにくさを感じていた。パンチをまっすぐ打っても、思うよう当たらないのだ。ぐっと深くかがみ込んだかと思えば、思わぬ攻撃を仕掛けてくる。