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「今年は打てないチームなので」…“56連勝ストップ”今季の大阪桐蔭は例年よりも弱いのか?「猛打」無きチームのホントのところ
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2023/07/29 06:00
プロ注目左腕のエース・前田悠伍はここまで4回戦の東海大仰星戦のみ登板。6回2失点とまずまずだった
“不完全燃焼”だった2戦を思えば、準々決勝の大体大浪商戦は初回から3点を奪い、4回には5点、6回には3点を挙げた。この試合も相手のミスが重なったとはいえ、徐々に攻撃に勢いがついてきたように映った。
ちなみに前田は前述の東海大大阪仰星戦で6回を投げ「対外試合では記憶にない」と本人が言う“1試合2被弾”を喫するなど4安打2失点。それ以降はまだ登板していない。
マウンド上では下半身がややガッチリしたように見え、聞くと「以前穿いていた練習着がSSからSサイズになったんです」と肉体改造の成功に満足そうな表情を浮かべた。切れ味が増したストレートなど時折強いボールを要所にちりばめ、さすがという部分もあったが、体がやや横振りになっていたのが気になった。それでも約3カ月半ぶりの公式戦マウンドでの内容なら、まずまずということだろうか。
例年のような猛打で圧倒することはできなくても、5戦すべてでコールド勝ちができているのはさすがとしか言いようがない。
圧倒できなくても……「負けない強さ」
高校野球は毎年選手が入れ替わるため、前年と同じ戦いができる訳ではないが、それでも近年の功績を思うと、大阪桐蔭にはどうしても大きな期待を寄せてしまう。「有望な選手が集まっているんだから当然」という見方をする者もいるが、能力が高い選手が多くても、それが夏になれば確実にチームとしての“線”になるのかと言われればそうではない。普段の取り組み方や一人ひとりの心掛け、そしてチームの方向性を全員で共有できて初めて進歩できる。指揮官が「打てないチーム」と揶揄しても、打てないなりに選手たちがどう噛み砕いてゲームに反映できるか。選手らの姿勢が問われる夏となる。
まずは大阪の頂上決戦へ向け、残りの試合を全力で戦う。
圧倒しっぱなしではなくても、打てないなりに、どんな得点パターンを作り上げるのか。復帰したエース前田を中心に、西谷監督がよく言う「粘って、粘って」相手を押し切る野球を披露できるのか。
泥臭く、しぶとく勝ち続ける大阪桐蔭を、この夏はもっと見てみたい。
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