「19歳伯桜鵬も盛り上げてくれたよね」

　大栄翔も若元春も大関取りは叶わなかったけれど、14日目、ふたりとも立ち合いに変化してたね。もちろん勝ちたい気持ちもわかる。でも、自分の相撲を貫いて勝てなかったら、それは「まだまだ」ってことなの。安易に勝って昇進しても、そこから苦労することが目に見えてる。

　実は若元春が一番先に大関になるかな、と僕は思っていたんだ。なぜならば左四つの型をしっかり持っているからなんだよ。ここ数場所、3人のなかで一番いい流れでもあったしね。先場所まではガッツリ自分の型で迷いなく行っていたのに、今場所は逃げたり変わったり……。もっと自分の型に自信を持てばいいのになぁ。でも、若元春も大栄翔も、ふたりとも「今はまだ大関になる時期じゃなかったんだ」と前向きに考えて。まだまだチャンスはあるはずだよ。

　優勝決定戦で賜杯を逃した北勝富士。今場所のどこがよかったかって、申し訳ないけど、他がだらしないからたまたま勝ち進んだ、というイメージなんだなぁ。

　19歳の新入幕、伯桜鵬も今場所を盛り上げてくれたよね。あえて言えば、ほとんど組む相撲が多くて、馬力のある相手だとなかなか押せないのかもしれない。でも今後が楽しみな存在だよな。

表彰式を終え、支度部屋で談笑する豊昇龍（左）と伯桜鵬　©JIJI PRESS

行司サンの「まわし待った」騒動

　そうそう、行司サンの「まわし待った」が物議を醸したけれど、やっぱり、しっかりと流れを見て「空気を読んで」ほしいよ。動きが止まらず、タイミングが難しい場合もあるとは思うけれどね。3日目の照ノ富士対翔猿戦で、翔猿のまわしが緩み、伸びきっちゃってた。彼がもともとユルフンなのかわからないけれど、普通は相手がまわしを取りにくいように、水を含ませて硬くしてまわしを締める。まわし待ったで行司サンが結び目を直すんだけど、もともとお相撲サンがふたり掛かりで締めたりしているものなんだから、行司サンがなかなか直せないのもしょうがない。軍配より重いもの、持ったことないんだからね（笑）。

3日目、翔猿（右）は照ノ富士を寄り切りで破る。翔猿のまわしが伸びきっていたが、「まわし待った」はかからなかった　©JIJI PRESS

8日目、翠富士（左手前）と霧島の一番は「まわし待った」で一時中断。霧島のまわしを締め直す場面　©JIJI PRESS

　とにかく今場所は、お相撲サンたちがそれぞれに頑張って盛り上げてくれて、近年にないくらいに面白い場所だった。暑いなか、本当にお疲れ様でした。すぐに夏巡業が始まる。それまでの1週間の場所休み、のびのびしてくれよな。

（構成＝佐藤祥子）

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。