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“中学生レスラー”の華麗な飛び技…「一番緊張した」チャンピオンとの一騎打ちで美蘭が見せた“成長の証” 受験勉強との両立が今後の悩み?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/07/27 11:01
2022年4月にデビューした新人レスラーの美蘭。板橋大会ではチャンピオン梅咲遥とシングルマッチを行った
チャンピオンとの一騎打ちで見せた「頑張る姿」
デビュー「2周目」に入って迎えた6月4日には、ディアナの板橋グリーンホール大会が開催された。美蘭にとっては地元、初めてプロレスを見た思い出の会場だ。1年前、デビュー2戦目を行なって以来の板橋大会でもある。今回の対戦相手も、その時と同じ梅咲遥だった。
しかも今回は、単に“憧れの選手との対戦”というだけではなかった。梅咲は4月にディアナのシングル王座を獲得、団体の頂点に君臨する選手になっている。チャンピオンとの一騎打ちは、成長を示す上でも絶好のチャンスだった。
梅咲はエルボーの強烈さで知られる選手だ。美蘭との試合でも、ことさらに危険な技は使わないが一発一発が厳しい。逆エビ固め、ミサイルキックといったシンプルな技に“いつでもフィニッシュしてやる”という気迫がこもる。耐えられないならすぐに終わらせるぞ、という狙いが伝わる攻めだ。
劣勢の場面が多い美蘭。だからこそ“頑張る”姿が印象に残りやすい。エルボーも一発ごとに吹っ飛ばされながら、必死に打ち返していく。隙を突いての反撃はその場飛びのムーンサルトプレスにライオンサルト(セカンドロープに飛び乗ってのムーンサルト)。華麗な飛び技に加えて、この日は顔面へのバックスピンキックも決めた。地元のカポエラ道場で学んだテクニックだ。
対戦相手も「美蘭、頑張った! 本当によかった」
この日は地元の友人、カポエラ道場の仲間たちも応援に来ていた。「だからカポエラの蹴りは絶対に決めたかったんです」と美蘭。結果として敗れたものの、1年前との違いを見せることには成功したと言っていい。対戦した梅咲は、こんな言葉で後輩を称えた。
「余計な言葉で飾る必要ないです。美蘭、頑張った! 本当によかった」
美蘭は「これまでで一番緊張しました」と試合を振り返った。1年ぶりの地元での試合。入場して客席を見渡すと、友だちや知り合いの顔が目に入ってきた。「一瞬で全員分かりました」と言う。そんな状況で「今年も負けてしまったら……」という不安が緊張感を高めた。
「でも嬉しさもありました。遥さんはディアナのトップのベルトを持っている選手。そういう人と地元でシングルマッチをすることができたので。1年前と比べて、気持ちだったり粘り強さは遥さんにもお客さんにも見せられたかなと思います」