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“中学生レスラー”の華麗な飛び技…「一番緊張した」チャンピオンとの一騎打ちで美蘭が見せた“成長の証” 受験勉強との両立が今後の悩み?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/07/27 11:01
2022年4月にデビューした新人レスラーの美蘭。板橋大会ではチャンピオン梅咲遥とシングルマッチを行った
カテゴリー分けのないプロレスだからこそ
もう一つ、重要なのはプロレスと他の格闘競技の違いだ。通常、格闘技の少年部(キッズ、ジュニア部門)の試合は年齢や体重などで細かくカテゴリーを分ける。打撃系の競技ならカテゴリーに応じたプロテクター(ヘッドギアなど)の装着が義務付けられている。そのことで安全性を確保しているのだ。
一方、プロレスには年齢によるカテゴリー分けがない。「プロレス団体」の中にプロとアマの区分けもない。デビュー戦でチャンピオンと当たることもある。空手やキックボクシングではありえないことだが、プロレスでは“あり”だ。といってただちに「危険すぎる」とも言えない。なぜなら、プロレスラーたちは試合の中で自然に、明文化されていないカテゴリー分けをしているからだ。
実力差があるからといって何をやってもいいわけではない。ケガをしない、させないことがプロレスの大前提。相手の技量や頑丈さを練習や試合で確かめ、信頼し合って技を仕掛けて勝ち負けを競い観客を楽しませる。「この選手では受けきれない」と感じたら必殺技を使わないこともある。
嬉しそうに語った「腕の筋肉も前よりつきました」
誰彼かまわず顔面を蹴り飛ばしたり、頭から投げ落とすわけではないのだ。それでいて、手を抜いているということでもない。それがプロレスという特殊な、それゆえに興味深いスポーツエンターテインメントなのである。
井上京子を筆頭に力のある選手に囲まれているからこそ、美蘭は伸び伸びとプロレスができている。スターダムの若手主体興行『NEW BLOOD』では人気選手・天咲光由とのシングルマッチも経験した。美蘭と天咲はともに2022年デビューだから同期になる(ちなみにフワちゃんも同年デビューだ)。
まだ中学生だから、団体としても決して無理はさせない。その中で先輩に思い切りぶつかったり、他団体の同期を意識しながら、美蘭は少しずつ力をつけている。天咲戦を終えたバックステージで話を聞くと「腕の筋肉も前よりつきました」と嬉しそうでも恥ずかしそうでもある表情で教えてくれた。