格闘技PRESSBACK NUMBER
清宮海斗27歳はもはや“期待の若手”ではない…新日本プロレスのイチオシ「令和闘魂三銃士」を相手に“ノアの代表”が見せつけた違いとは
posted2023/07/24 17:00
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
7月21日、新潟・アオーレ長岡。
『G1 CLIMAX 33』のAブロック公式戦、清宮海斗と海野翔太の対決は、20分時間切れ引き分けに終わった。札幌での開幕戦で辻陽太を破り、山形では曲者のチェーズ・オーエンズも退け2連勝を飾っていた清宮だが、G1で初めて勝ち点を1つ落とした。
2人に送られた拍手の意味合いはそれぞれ異なり…
「クソ! 甘かった!」
プロレスリング・ノア(NOAH)の若きエースは悔しさを隠さなかった。低空ドロップキック、ドラゴンスクリュー、膝へのミサイルキック、そして足4の字固め……。武藤敬司から継承した足攻めでギブアップを迫り、懸命にロープへ逃れようとする海野を2度もリング中央まで引きずり戻した。いつ決着のゴングが鳴ってもおかしくない状況だったが、限界を迎えてもギブアップしない海野の意地が、20分1本勝負というレギュレーションを味方に引き込んだ。
場内に「残り試合時間3分」というアナウンスが響き、清宮がより一層力を込めて絞り上げる。しかし、海野は悶絶しながらも頑なにギブアップの意思を示さない。すると「このままひたすら耐え抜かれて引き分け」という結末が頭をよぎったのか、清宮は自ら足4の字固めを解きフォール勝ち狙いに移行。しかし、タイガースープレックスや変型タイガードライバーを決めても3カウントは奪えず、最後は変型シャイニングウィザードを変型デスライダーで切り返され、時間切れ引き分けのゴングが鳴り響いた。
5日前までは同じ年齢だったノアの27歳と、新日本の26歳。「お前とはこれから5年、10年、20年戦っていくと思う。絶対に負けたくないライバルの1人に、お前は加わった」と海野が言うように、プロレスの未来を担っていくであろう者同士。そんな2人の熱戦に、観衆は長い拍手を送った。
ただし、その拍手の意味合いは、彼らに向けられる言葉やファン同士の会話を聞くに、それぞれ異なるものだった。海野に対してはおおむね「よく頑張った」というものであり、清宮に対するそれは「さすが」というものだった。
そこには、清宮を見つめる新日本のファンの視点が、G1参戦発表時から次第に変化していることが表れていた。