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「井上尚弥のパワーを恐れずに戦えたら」痛烈KO経験者ドネアはなぜ“フルトン優位”と予想? 40歳不屈の男も認めた“フルトンの強み”とは
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2023/07/18 11:01
井上尚弥の“挑戦”を受けるスティーブン・フルトン(28歳)。公開練習は異例の15分で終了した
――日本にも依然としてあなたのファンはたくさんいて、今回のインタビュー前にも多くの質問を受け取りました。日本のファンが最も気にしているのは、あなたが現在も戦い続けるモチベーションです。前戦の井上戦でKO負けを喫したあと、引退は考えなかったのでしょうか?
ND 井上との第2戦後、家族、友人も含めた私のチームとミーティングを行いました。そこで一度、もう止めようと決めたんです。ただ、その数時間後には、「私にもう一戦、機会を与えてほしい」と考えが変わりました。井上はすごいボクサーで、ああいった負け方をしましたが、私はまだ力を残していると感じられたのです。次の試合でその力を示せなかったら、そこで終わりにしよう、と。そういった経緯で、一時は確かに引退を考慮しましたが、すぐに取り下げました(笑)。サンティアゴ戦で私が依然としてトップレベルの力を保っていると示せたら、その後も意欲が続く限り、戦い続けたいと思っています。
――レイチェル夫人は今回は引退を望んだんじゃないでしょうか?
ND 妻は私のトレーナーでもあります。井上戦後、じっくりと話し合いました。彼女は憤ってはいませんでしたが、もちろん落胆しており、もうあんな負け方するのは見たくないと言われました。ああやって倒されるのも、痛めつけられるのも見たくないと。まずはトレーニングで力を残していることを見せられるのなら、まだ戦っても構わないと伝えられました。基本的にサポーティブでしたが、またリングに上がるのなら、それだけのものを見せてほしいと念を押されたわけです。もちろん私の身体を心配してくれていたことは間違いないですから。
――こうして試合が組まれたということは、それだけのものを示して来られたということでしょうか?
ND これから先も続けたいなら、今回の試合の中でまだまだそれを誇示していかなければいけません。私の現役続行の鍵は妻が握っています(笑)。
「まだまだバンタム級で戦いますよ」
――次の相手のサンティアゴはどんな選手なのでしょう?
ND タフなボクサーですね。メキシコ人らしく、ラフな戦い方を好む選手。タイプ的には(2015年12月に)プエルトリコで戦ったセサール・フアレス (メキシコ)に似ていますね。タフで、馬力があり、前に出てプレッシャーをかけてくるファイター。激しい打ち合いを望んでくるでしょうけど、今戦に向けて、私は自信を持っています。
――加齢とともに体重維持が難しくなってくるのが一般的ですが、今後もまだバンタム級で戦い続けるのでしょうか?
ND 新たな挑戦の機会を模索するために階級を上げてきましたが、実際にはバンタム級こそが私の適正体重だと思っています。だから、まだまだバンタム級で戦いますよ。この階級で4団体統一王者になることを目標に掲げてきましたし、その気持ちは今でも変わっていません。