大相撲PRESSBACK NUMBER
現役時代の魁皇は“横綱に推す声”をどう受け止めていた?「貴乃花のときもそうでしたが…」優勝5回、“横綱にもっとも近づいた名大関”の告白
text by
飯塚さきSaki Iizuka
photograph byShigeki Yamamoto
posted2023/07/08 11:22
元大関・魁皇の浅香山親方のロングインタビュー最終回。幕内最高優勝5回の名大関に、横綱昇進が叶わなかった当時の心境を聞いた
なぜ、多くの力士が魁皇に憧れるのか
――現役力士たちのなかでも、横綱・照ノ富士関を筆頭に、小さい頃の“憧れの力士”として魁皇関の名前を挙げる人が多いのですが、それはご存じですか。
知らないです(笑)。それ、本当ですか? 1回も聞いたことないですよ。そんなこと言うわりには、うちの部屋に誰も来ないじゃない(笑)。
――(笑)本当です! それをお聞きになっていかがですか。
いやあ、やっぱりうれしいもんですよ(笑)。そうやって見てもらえていた、というのはね。自分なんか、勝っても負けても雑で、現役のころは「豪快に投げてばっかりだからケガするんだ」ってよく言われていたんですから。たぶん本当にカッコいい相撲っていうのは、前に出ながら投げるとか、どっしりと安定した力強さを見せつけること。自分の場合は中途半端でした。
――いえいえ。名大関・魁皇の豪快な上手投げが、ファンだけでなく多くの“未来の力士たち”を魅了していたのは間違いないと思います。
そういえば、自分も若い衆として安芸乃島関(現・高田川親方)の付け人をしていたとき、2階席にいたのに土俵から「ゴーン!」と頭同士がぶつかる大きな音が聞こえて、すごく衝撃的だったのを覚えています。同時に、それくらい体を鍛えている者たちがやるからこそ、相撲って面白いんだな、と。普通と同じだったら、面白くないでしょう。そうやって「すごいな、カッコいいな」と誰かの心を震わせるような力士を育てていかなきゃいけませんね。
――その観点も含めて、現在の角界で親方が注目している力士は誰ですか。
最近は落合(伯桜鵬)や豪ノ山といった注目株が幕内に上がってきたので、また一段と面白くなると思います。アマチュアで活躍した力士だけではなくて、湘南乃海みたいに15歳から叩き上げでやってきた子が伸びていくのも楽しみですね。あと、二所ノ関部屋の大の里。体つきがいいし、圧力のある相撲っぷりもいい。そうやって若手がどんどん伸びてきて、いま幕内上位にいる人たちを押しのけるくらいの勢いで“新しい時代”を作っていってくれることに期待したいです。