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7年連続高卒Jリーガー輩出! 昌平高校サッカー部監督がこだわり続ける指導哲学「目的達成のためには高校3年間では足りない」 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/06/23 17:00

7年連続高卒Jリーガー輩出! 昌平高校サッカー部監督がこだわり続ける指導哲学「目的達成のためには高校3年間では足りない」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

昌平高校を率いる藤島監督

 2012年にジュニアユースのFCラヴィーダを設立。同時に法人も立ち上げて、そこで指導者の雇用を担った。監督には習志野高校の同級生である村松明人が就任し、昌平高校のヘッドコーチと兼任する形をとった。それだけでなく、ラヴィーダのスタッフ全員が、昌平高校の指導にも関わることになった。

「ラヴィーダと昌平は同じヴィジョンを持っていますが、トレーニングのメニューや求めるところは異なります。ラヴィーダは個で仕掛けることや守備の確立にこだわってやっていますが、昌平はそれプラス、グループと個の立ち位置の中でどう判断、精度を磨くか。そのために中学校年代と高校年代をしっかりとリンクさせることが重要です。だからこそFCラヴィーダと高校を兼任することで、フィードバックや全体の把握、長期的なスパンを共有できるようにしています」

7年連続で高卒Jリーガーを輩出

 FCラヴィーダと昌平高校。この2つのチームがそれぞれのカテゴリーで徐々に頭角を現していった。

 昌平高校は強化8年目の2014年度の全国高校サッカー選手権大会に初出場したのを皮切りに、全国トップレベルの強豪校まで駆け上がった。今年は高体連、Jクラブ、街クラブのすべてのユース年代の最高峰リーグである「JFA U-18プレミアリーグ」に所属。昨季まで7年連続で高卒Jリーガーを輩出。トータルで17人のJリーガーを育てている。

 FCラヴィーダも2014年に一番下のカテゴリーの埼玉県リーグからスタートすると、優勝を繰り返し、最高峰の関東U-15リーグ1部まで全て優勝という形で昇格。Jクラブのジュニアユースがひしめく同リーグで2020年、2021年と2連覇を達成すると、ジュニアユース年代の最高峰である高円宮杯JFA全日本U-15サッカー選手権では2021年度に準優勝に輝いている。昌平からJに羽ばたいた17人のうち、7人がFCラヴィーダ出身の選手だ。

 現在、昌平高校サッカー部のコーチングスタッフは13名。指導者はFCラヴィーダ、U-12の選手を対象にしたスクール、そして昌平高校と3つの現場を見ることで、労働時間と安定した雇用環境を確保。選手たちもその一貫した指導体制とサッカーに憧れを持って入ってくるようになった。昨年と今年、昌平高校のスタメン11人全員がFCラヴィーダ出身の選手になったこともあった。

「もちろん高校のスタメン全員をラヴィーダの選手にしたいと思っているわけではありません。大事なのはラヴィーダだからではなく、その時にいい選手が試合に出ること。ラヴィーダで育った選手と、他のクラブで育った選手たちが加わって、ここで刺激をし合ったり、新たな競争が加わったりすることで選手たちが成長していく環境にすることが大事だと思っています」

「草サッカーでもプレーを楽しみ続けられる人間に」

 実際に今年のチームの中心選手の1人に、山梨県のアメージング・アカデミーのジュニアユース出身であるMF大谷湊斗がいる。技術、判断力が非常に優れている彼は「ラヴィーダ以外でも(僕のように)昌平でやれることをこれから入ってくる選手たちに伝えたい」と強い意志と覚悟を持って取り組んでいる。

「私たちはプロ選手を育成することが主な目的ではありません。技術や判断力、大人とのコミュニケーションを3年、6年で磨いていけたら、サッカーも上手くなるし、人間としても成長できる。社会に出た時に、異なる価値観の中でリーダーシップやリレーションシップを取れる人間になってほしい。それでいて、サッカーが大好きで、街クラブでも、草サッカーでもプレーを楽しみ続けられる人間になって欲しいです」

 FCラヴィーダと昌平高校。一貫したヴィジョンと柔軟性を持った選手育成と、指導者の雇用と育成の2軸を持って成長を遂げるこのクラブのあり方が、育成年代のサッカー界において、1つのモデルケースとして大きな意味と価値を生み出している。

【動画を見る】雑誌ナンバーの記事が全て読めるサブスク「NumberPREMIER」にて、60分にわたる藤島監督のインタビューを収録した動画【完全版】昌平高校サッカー部はなぜ強くなったのかが見られます。育成論とマネジメント論には日本の教育や社会を分析するためのヒントも。

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